試験運用が開始される脳死蘇生技術

05.05.2016

Photo: naked science

 

保険証の裏にある脳死を宣告された際の臓器提供の意思確認欄は記入しているだろうか。脳死で臓器提供が当たり前のように行われそれで救われる患者にとっては救いの神であり、臓器を提供する人間の家族にとってはい暖まれない場合も多い。脳死判定は脳幹細胞が機能を停止、意識がなく呼吸機能も停止した場合である。

 

機能停止した脳機能(脳死)を蘇生する技術が米国で開発された。米国のバイオテク企業バイオクオーク社(Bioquark)が脳死の20件について試験的に蘇生措置を行う倫理許可を米国とインドの厚生省(NIH)から認可された。脳の蘇生では幹細胞とペプチドが投与され神経組織が再生されると、昏睡状態から脱するために神経刺激とレーザー照射が行われる。

 

生命維持装置に頼って生命を維持している脳死者は数ヶ月にわたり脳イメージングで蘇生の可能性が調べられる。特に心臓と呼吸機能の制御をつかさどる中枢神経の機能保全が蘇生への条件となる。

 

研究チームによれば幹細胞の再生によって記憶は失われ、新たな生活を始めることになる。20件分の蘇生認可を受けたバイオクオーク社は試験的な脳蘇生を受ける患者が募集する。

 

 

Source: The Atomic

 

最初の蘇生試験は治療に適したケースを選んでインドの病院で行われる。最初にペプチド混合液が毎日中枢神経に送り込まれ、週一回幹細胞が6週間に渡って投与される。

 

脳死でも心臓が動いて血液が循環しているほか、生命活動が維持されている。脳幹細胞の再生能力がないために脳死から蘇生することができなかったが、幹細胞投与で中枢神経が再生されることで蘇生が可能となる。実際に動物の中には蘇生能力を備えたものもいる。脳死の蘇生研究によりアルツハイマーやパーキンソンなど記憶障害の治療につながると期待されている。ただし脳機能の完全な蘇生への道のりはまだまだ遠い。

 

完全蘇生へ向けた研究は始まったばかりである。当面は蘇生技術の開発過程で脳機能の理解を深めるということになる。しかし実際の人間を使った試験運用で幹細胞再生医療が倫理面で一歩踏み込んだことになるのは間違いない。