進化する風力発電

2.04.2016

Photo: Study in Denmark

 

風力発電先進国といえばデンマークであるが、発電量でいえばドイツ、スペイン、そしてデンマークが御三家で、欧州の風力発電量の8割以上をこの3カ国が占める。風車から始まるデンマークは最も古くから再生可能エネルギーに取り組み、2013年には国内の発電量の1/3を風力発電で作り出すほどになった。以来、海上風力発電事業においてデンマークは圧倒的な強みを見せなんと2020年までに風力発電の発電量で国内電力の50%を担う構想を立てている。

 

日本は風力発電後進国で、ようやく2014年に全国の2,000基の風力タービンで250kWに達し、大型タービンのメガフロート発電など大電力発電への取り組みも始まっている。風力発電は、風まかせという安定性と台風の被害や低周波雑音などのマイナスイメージが強い。しかし実は意外に単価が安い電力(注1)を供給できることと発電システムの構造が単純なため、風力が豊富なデンマーク他の3カ国で発展を遂げた。

 

(注12001年時点で単価は1024/kWh。燃料電池サーバーの単価が25/kWh。大型になるほどタービン口径を大きくできて効率が上がるので費用対効果を上げるには、ウインドファームや洋上プラットフォームなどの大規模化が望ましい。

 

巨大ブレードタービン:SUMR

風力発電の原理は単純だがブレードの設計や材質・構造など決め細かい進化によって効率が上がり、建設・維持コストが下がっている。一般的なブレードは3枚羽である。性能は口径が大きい方が有利で巨大化する傾向にあるが、将来は最適口径が大型ブレードでは400mにも達する。こうした大型ブレードの発電システムのシミュレーションでは50MWの発電が可能となる。2019年にはスケールモデルで実証実験が予定されており、10年以内の実用化を目指す。

 

これまでも巨大ブレードの試みはあったが構造的な問題(機械強度)のため、重量と耐風強度に問題を生じた。米国の技術者の新しい設計では強風時には椰子の木のようにタービンブレードがしなって抵抗を低くする設計で、強度を上げることで巨大化が可能になった。新設計の巨大風力タービン(SUMR: Segmented Ultralight Morphing Rotors)は全体の高さが479mに達しエンパイアステートビルより30mも高くなる。一般的な風力発電では口径100m程度のブレードが使われる。

 

 

最大の特徴は従来のタービンが風に向かって逆うように動作するため風の抵抗をまともに受けていたが、SUMRではブレードが椰子の木のようにしなって風の抵抗を減らす「風との親和性」にある。またこれまでのようにブレードは一体化していないので細かく分けて運ばれ現地で組み立てられる。さらに風に対してブレードが最適に開く。SUMRはしかし陸地に設置するのには巨大すぎるので、海岸から30-40km離れた洋上に設置される。

 

 

日本発の新技術ー風レンズ

日本発の風力発電技術としては流体力学を使って、九大が開発した「風レンズ」がある。「風レンズ」は円筒の中心に流を集めタービンを効率良く回転させる技術で、風速、風向が頻繁に変化する日本(風力発電が盛んでない理由の一つ)に適合する風力発電技術である。

 

 

飛行船でタービンを上空へ

飛行船でタービンを上空に設置するも注目されている。夏場は3,000m付近の上空の風(毎時36km)が強いので、円筒状の飛行船の中心にブレードを仕込んで、発電するというものである。

 

 

風力発電も技術開発が進み1基あたり50MWもの発電が洋上で可能になろうとしている。トヨタは風力発電で製造した水素を燃料電池フォークリフトへ供給する実証試験を開始した。完全にゼロエミッションの数少ない再生可能エネルギーとして新技術を武器に今後はより重要度が高まる可能性がある。