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新政権樹立に向けて、イタリアの北部同盟と五つ星運動の両党は、欧州中央銀行(ECB)に対し、2,500億ユーロにのぼるイタリア政府の債務帳消しの要請の他、ユーロとのパラレル通貨、mini-BOTs’導入に合意、EUとの対立は本格化していきそうである。
初めてではないパラレル通貨構想
近年、政府債務問題の解決策としてパラレル通貨構想の導入は検討されてきた。米カリフォルニア州が2009年に190億ドルの財政赤字による財政難に陥った際、州政府は2年間債務の返済にIOU(借用証書)を発行した例がある。この期間、カリフォルニア州ではドル紙幣と平行して州内で通貨として使用されていた。ギリシャも2015年にユーロと平行する独自通貨構想が検討されたが、実現されなかった。
イタリアのmini-BOTs’とは
イタリア政府は将来の税収に基づいて、ユーロの代用としての疑似通貨mini-BOTs’を発行する。額面価格よりおそらく低い価値のユーロと交換できることから、ユーロとのパラレル通貨となる。しかし、発行に当たって問題となるのが、mini-BOTs’の価値である。
イタリアの国債発行残高は2018年5月の時点で2兆3,310億ユーロに増加し、過去最高額に達している。債務比率は国内総生産(GDP)比132%で、ユーロ圏ではギリシャに続いて2番目に高い。
イタリア政府は欧州委員会から政府の債務対GDP比率を引き下げるよう要求され、緊縮財政にある疲弊している経済(特に若者層40%に達する失業率)で、雇用対策や経済刺激対策を打ち出さない悪循環にあり、債務返済も年々難しい状況に置いられている。現在の財政状況の悪化を防ぎ、債務による国民への負担を緩和を目的としているが、mini-BOTs’構想の具体策とEUの対応が難関となる。
今回のイタリア総選挙で反EUとEUに懐疑的な立場をとる政党である中道右派連合と五つ星運動が勝利したのも、EUの移民政策と緊縮財政への反発が大きな理由となった。ユーロとのパラレル通貨の発行は、中道右派連合の北部同盟の選挙公約でもあり、新政権発足に向けて、両党がイタリア債務問題の解決策として合意できた政策でもある。課題は多いが、ユーロ以外の通貨の発行はEUとの対立だけでなく、EU離脱に向けての第一歩となる可能性となるかが注目される。
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