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9月9日にスェーデン総選挙が行われる。投票日を前に、全ての世論調査は、反移民、反既存政治、EU懐疑派の極右派政党スウェーデン民主党(Sweden Democrats)への支持率の上昇、大躍進することが予想されている。現在、支持率では第3位だが、中道右派の穏健党(Moderate Party)を抜き第2位の政治政党になるのは確実とみられ、1933年以降約65年間最大与党として政治体制を続けてきた社会民主労働党(Social Democrats)を抜き、スェーデン最大の政党になる勢いを見せている。
社会民主労働党政権は現在のスェーデンモデルの福祉国家を築いたことで知られている。これまで高い経済成長と強い民間セクターで寛大な福祉制度を維持してきた。しかし、ドイツやイタリアのように、人口減少に伴う労働力不足の問題を移民受け入れで解決しようとした政策で次第に支持率は低迷していった。2012年から積極的に移民、難民を受け入れ、ピークの2015年には16.3万人の主にシリア、イラク、イランとソマリアからのイスラム教難民を受け入れた。受け入れた移民の人口比の割合は他の欧州諸国では突出していたのである。このころから、スェーデン人の移民に対する態度や考えが変わり始めたのである。
移民政策により、凶悪犯罪は激増、スェーデン中に移民で構成するゲットー区域ができ、治安は悪化、福祉制度へのコスト拡大などスェーデン社会が変貌していった。また、スェーデン諜報局によると、難民と称して現在スェーデンには数千人の過激派イスラム教徒がいると報告している。2017年には、ストックホルムで死者4人、負傷者14人のトラックが群衆に突っ込むテロ事件が起きている。
躍進するスエーデン民主党
1988年に設立されたスェーデン民主党はネオナチ色が強かったが、イィミー・オーケソンが2005年に党首になってから中道路線をとることで、支持率は徐々に上がり、2005年に5.7%であったのが2014年の総選挙で13%、29議席を獲得し、スェーデン第3位の政党となったのである。反移民、反 EU、国の財源を両親ともに自国生まれのスェーデン人のための社会保障に充てるべき、スェーデンの文化、習慣や価値観を護るべきなどの主張で支持を集めている。
今回の選挙でスェーデン民主党が第1党の議席を獲得しても、政権を発足することはできない。スェーデン民主党単独で政権発足の議会数を獲得すること不可能のうえ、他の政党は極右政党との連立に否定的であるからである。
与党の社会民主労働党は議席数を大幅に減らし、スェーデン民主党の他、中道右派や中道左派の政党が議席数を伸ばすことが予想される(下図)。ドイツのように与党の社会民主労働党と中道派政党による大連立が成立する可能性は高い。だが、スェーデン民主党の影響力を無視できない政党になったことは、欧州における既存政治体制の崩壊が北欧でも始まったことを意味する。
投票日前の最後の世論調査結果(主要世論調の予想平均)
政党 議席数
民主労働党 77-99
スェーデン民主党 56-94
中道右派の穏健党 56-78
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