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これまでモンサントのGMO作物世界戦略の基盤となる除草剤ラウンドアップの安全性を巡って、各国の農業団体や農家が懸念を持ち、反対運動が強まっていた。EU欧州委員会は、発癌性を考慮して、除草剤グリホサートの使用許可を通常の期間(5~7年)より短い期間とする提案を行った。
EU執行機関である欧州委員会は、当初は除草剤グリホサートの使用許可を10年間更新することを勧告していたが、欧州議会が2022年までにグリホセート使用停止に関する拘束力のない決議案を承認したことを受けて、健康被害への脅威が増大していることを考慮した新提案を公表した。
環境保護団体は発癌性だけでなく自閉症との因果関係が疑われる悪名高いグリホセートの禁止を求めており、130万人以上の人々の署名を集めている。グリフォサートの使用許可は12月15日に満了した機会に、公立公園や遊び場の近くでのグリホサートの使用中止を求めている。
EU参加国の中でもっとも多いグリホサート消費国のひとつであるフランス政府が除草剤を段階的に廃止する意向で、イタリア、オーストリアとともに、グリホサートの使用許可を10年間に更新することに反対している。グリホサートは植物のアミノ酸合成を阻害し枯死させる。除草剤ラウンドアップの成分で、動物への毒性はないとされてきたが、発癌性や幼少時の植物を経由した摂取が急増する自閉症の原因であるとした批判が高まった。
モンサント社の看板商品となっている除草剤ラウンドアップで使用されているグリフォサートのへの批判は、世界保健機関(WHO)の国際癌研究機関が「発癌性の疑いが濃い」と結論づけた2015年の研究から急速に高まった。しかしこの結論はWHOの他の専門家および国連食糧農業機関が実施した2016年の報告と矛盾しており、脅威に対する評価を巡って足並みが揃わない(下の図)。
モンサントは、グリホサートが欧州の法律や規制のもとで使用許可更新のすべての要件を満たしているとし、ポピュリズムによって正当な政治判断が歪められているとして高まる安全性の議論に懸念を表明した。しかしモンサントの世界戦略が安全性の危険性ばかりではなく、農家から種子と肥料、除草剤の選択を奪いとる悪質な商法への批判は強まる一方で、今後の政治を巻き込んだ法廷闘争に発展する可能性が高い。
日本への影響がないどころかTPPで半ば強制的に導入は避けられなくなる。一方で国民の健康食品、オーガニック食品への関心は高まりつつある。発癌性の危険性が否定できない除草剤が使用されている食品を避けたいと誰でも思うだろうが、使用が広まれば避けられなくなることが問題なのである。
Credit: AFP
Updated: 11.08.2018 10:58 JST
モンサントがグリホサート発癌訴訟で敗訴
サンフランシスコ陪審は、モンサントのラウンドアップ除草剤が末期癌を与えたとして訴えていた元俳優で学校の整地作業職員のドエイン・ジョンソン氏に2億8,900万ドルの損害賠償を命じた。判決(補償的損害賠償額4000万ドルと懲罰的損害賠償額2億5000万ドル)はジョンソン氏のリンパ系の癌がグリホサート除草剤によって引き起こされたことが認められたことになる。
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