カリフォルニア山火事による放射能汚染リスク

16.11.2018

Photo: hollywoodreporter

 

 ロサンゼルスの山火事の犠牲者は増えるばかりで、行方不明者を含めれば相当な人的被害がでるとみられる。また富裕層住宅の多いパラダイス地区は焼け野原と化した。しかしウースリー山火事が別次元の汚染を広げるリスクについては報道されていない。近くで火災が発生したサンタスザーナ野外実験所では過去に液体推進ロケット燃焼試験や原子炉が設置されていたことから、化学物質と核物質で土地の汚染が激しいからである。

 

 サンタスザーナ野外実験所の一角にある電力会社のチャッツワース変電所は、火災が発生するわずか2分前に障害が発生したことを報告していることから、火元として住民の訴訟問題に発展した。しかしこの地区は1959年、ナトリウム原子炉実験炉が一部メルトダウンした忌まわしい環境汚染の過去を持っている。

 

メルトダウンで広がる放射能汚染

 1959年7月13日にナトリウム冷却系が動作停止で燃料棒43本のうち13本がメルトダウンした。このためヨウ素131とセシウム137が大量に(1000Ci以上)大気に放出された。1Ciは3.7×1010ベクレル。周辺地域の線量増加で除染作業が行われた。1959年7月13日(メルトダウンの日)、当直であった原子力規制委員会の監視のもとで原子炉運転員はメルトダウンにより原子炉建物内の放射線レベルが急激に高まり測定限界を超えたことを知った。

 

 運転員は原子炉爆発の危機をさけるためベントを行い、放射性物質を大気中に放出した。西向きの風に乗って放射性物質は周囲に拡散した。問題はここから始まる。ベントの事実は公表されなかったが、運転員たちにも公言が禁じられた。50年前の事件なので風化されているが、このときに放出された放射性物質のガン発生の増加に代表される健康被害が報告された。

 

 事故から6週間後になって原子力規制員会は「核燃料に小規模の不備」があったことを認めたが、ベントの事実にはふれなかった。1979年にNBC4はメルトダウンがナトリウム原子炉実験中に起きたことを突き止めたが、米国政府は放射性物質の放出を認めていない。

 

変電所障害と山記事はほぼ同時

 電力会社の報告書によると、チャッツワース変電所の障害は木曜日、午後2時22分に発生しウースリーの火災は、同日午後2時24分に始まった。チャッツワース変電所は、メルトダウンした原子炉敷地に位置している。というのも変電所の当初の目的は、原子炉に電力を供給することでその後、民間の送電網に組み込まれた。

 

60年前にメルトダウンした原子炉用の変電所が火災に関連する可能性がある。原子炉から漏れ出た核物質で、土壌汚染が火災の影響で飛散し汚染を拡大する懸念が広まっている。