グローバルパワーを目指す中国~ジブチ軍事基地拡充

14.03.2018

Photo: en.cyplive

 

 中国は2017年7月に、アフリカ北東部のジブチに軍事拠点を設置した。しかしこれまでは物流と安全な港湾設備がないために軍事拠点としての能力は制限されていた。これに先立ち、外交面でも中国は2014年2月中国政府はジブチアのイスマイル・オマル・グレレ大統領と戦略的パートナーシップ契約を締結したことで、2016年にジブチ市商業港湾設備を活用した軍事基地設立に動き出した。

 

 一方、ジブチの地理的重要性(チョークポイント)を強く認識した米国、フランス、日本はジブチに軍事基地を設置することで、スエズ運河やバブ・アル・マンデブ海峡などの重要な海上貿易ルートの安全保障に努めた。 米国はジブチでの軍事プレゼンスを継続するため、20年間の賃貸借契約を新たに締結した。アフリカに大きな貿易・投資利益を持つ中国にとっても、ジブチ港は一帯一路政策の実現に不可欠な活動拠点である。中国の石油輸入の80%、天然ガスの11%がチョークポイントを通過する。

 

 2006年にジブチはドバイのDP Worldと30年間の港湾施設運営の運営権利契約を結んでいる。しかしジブチは2018年3月に、突然契約を一方的に破棄した。ジブチはその後、港湾施設の管理運営をシンガポールのPacific International Linesと契約した。Pacific International Linesは中国のChina Merchants Port Holdingsと深い関係にあり、将来中国の手に渡る可能性が高い。なおドバイは一方的な契約破棄に抗議し、現在係争中にある。米国はこうした中国のジブチプレゼンス拡大に危機感を持っている。

 

一帯一路のロジステイック・ハブとなるジブチ

 ジブチ港は、世界でも有数の海上貿易のチョークポイントで、アデン湾と紅海とスエズ運河をつなぐバブ・アル・マンデブ海峡に面している、欧州と中東間の貿易ルートの要所である。また、中央アフリカ諸国と西アフリカ諸国のロジスティックのハブでもある。このためジブチは中国の経済成長に必要な資源(鉱物、石油、消費材)を確保する「生命線」と言える。

 

 現在、中国はアフリカ最大の貿易相手国であり、2025年には大陸での事業価値が180億米ドルから4,400億米ドルに増加すると予測されている。中国のジブチ軍事拠点化の目的は、アフリカへの民間投資を増やしてインセンティブの創出につなげるために、恒久的に安全なロジスティック・ハブを確保することとされる。

 

 実際、アフリカの中国企業は約10,000社を越える。こうした企業はアフリカ中部および東部を中心とする鉄道、港湾や空港などインフラ整備に伴い、ジブチを経由地とした原材料および工場備品のロジステイクス能力アップの恩恵を受ける。ここまではアフリカ資源開発と貿易の経済基地としての側面であるが、軍事拠点には別の側面もある。

  

Credit: uchicagogate

 

軍事拠点化の意図

 中国の軍事能力の近代化、特に空母建造やサンゴ礁の飛行場建設で海軍能力は増強が続いている。特に将来4隻体制となる空母打撃群によって常時、インド洋に展開することで、中東・アフリカ地域の軍事バランスに大きな影響を及ぼす。経済拠点が強調されるジブチだが、ジブチの軍事基地化は海軍艦船と空軍支援能力が増強される。軍事拠点化は中国が軍事圧力によってアフリカと中東に睨みをきかせ自国の権益を確保するためでもある。

 

 また親米のインドを陸と海から包囲して、軍事圧力をかけアフリカ資源に触手を伸ばそうとする新興グローバルパワーとなる野望は米国との利益相反となり、チョークポイントの安全保障が脅かされる恐れがある。

 

 

 関連記事

ジブチ軍事基地建設に動く各国

中国がジブチの軍事拠点を本格化

新型空母で大洋進出を目指す中国海軍