サンフランシスコのダウンタウンが感染症ストリート化

23.02.2018

Photo: nbcbayarea

 

 NBCによれば調査した153区画のサンフランシスコのダウンタウンのうち41区画はドラッグ注射針が散乱し96区画は排泄物が撒き散らされた危険地帯であることがわかった。かつての「花の都」サンフランシスコは様変わりし、ゴミや注射針が散乱した劣悪な環境の区画が出現して、シテイホール周辺でさえも住民や観光客の安全性が脅かされる危険地区となっている。

 

 シテイホールはサンフランシスコ市政・文教のモニュメント的存在で周辺には学校も多いが、通りには糞尿が多く児童の通学に支障をきたすほどである。これらの汚染地区を避けるために汚染箇所を調べる地図、”Poop Map”やアプリが登場した。またこの地区はユニオンスクエアに集中する高級ホテルから観光客が徒歩でショッピングを楽しむ人気スポットが集中している。

 

 調査した153区画全てが生ゴミや粗大ゴミが捨てられて放置されていた。注射針や人間の糞尿は2008年から増加する一方である。糞尿が乾くと空中に飛散するのでHIV、B型、C型肝炎ウイルスも空気中に漂うことになる。このため感染症ストリートと呼ばれる危険地域は悪名高いブラジル、ケニヤ、インドのスラム地区を上回る。

 

 汚染区域の出現は観光客が減少しコンベンションの誘致にも影響が出始めている。このような悲惨な状態に陥った理由は市当局がホームレスに永住場所を確保する政策をとったため、一時的なシェルター整備が手薄になったことにある。住居を失ったホームレスが地区内を移動してとどまることが問題である。

 

 市には仮の住居が2,000人分用意されているが、それでは足らずさらに1,000人分が必要でそれには2,500万ドルの経費がかかる。また糞尿の清掃には3,000万ドルが必要となる。2016-2017年度の市の予算には清掃費用として6,000万ドルが計上されているが、歩道は法律上個人の管理下にあるため、市当局の管理外にあるが、糞尿清掃のための3,000万ドルは確保しなければならない。

 

 2009-2017年のオバマ政権中、2011年から2017年までサンフランシスコ市長を務めた中国系米国人のエドウイン・リー氏は、市の最低賃金を増やし失業率減少の実績を残す一方で、一部のIT企業を優遇する雇用政策を行ったため住宅価格が大幅に増加した。ホームレス支援政策も行ったが住宅価格が倍増しホームレスは4%増大した。

 

 なお慰安婦像を受け入れたことでも知られているエドウイン・リー氏は、それまで健康でいたが2017年12月に突然の心臓発作で急死している。サンフランシスコの中国人コミュニテイの支持を得ていたリー氏には政治的な敵対者も多く、一部には暗殺の噂もある。リー氏は中国系移民の受け入れに積極的で、サンフランシスコの住民の1/5が中国系移民となったのも同氏の尽力によるところが大きい。もともと1970年代から人種の坩堝であったサンフランシスコだったが、オバマ政権とリー市長時代の移民政策で中心地区は一変した。 

 

 もちろんホームレスは中国系移民が増えたことが原因ではない。しかし1) 行きすぎた移民寛容政策を背景に違法移民が増えたこと、2) 住宅価格の高騰、3) ホームレス救援対策を怠ったことが相乗的に働いた。下の地図は糞尿で汚染された箇所が示されたダウンタウン。