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ドイツ警察は親会社であるフォルクスワーゲン(VW)がディーゼル排出ガスの不正行為に関連してポルシェ幹部を拘束した。ポルシェは逮捕された幹部の名前を公表しなかったが、ドイツの人気紙(Bild)と経済週刊誌(Wirtschaftswoche)は、拘束されたのは2015年にディーゼルゲートが発覚した際に、ポルシェのエンジン部門を担当していたエンジニアであるジョルグ・カーナー氏であるとしている。
ポルシェ幹部が拘束された理由
検察当局は昨年7月から捜査を開始していたブルーム氏が逃亡の恐れがあるとして拘束した。ブルーム氏は警察に追われた際に逃亡を企てたとされる。幹部逮捕はドイツ警察がポルシェとアウディ本社を捜索した2日後に起きた。デーゼルゲートを巡ってポルシェ最高経営責任者2人と元従業員3人が捜査対象となっている。VWのデイーゼルゲートは同社のみでなく傘下のアウデイ(ランボルギーニ)、ポルシェ、Skoda、Seatを含む1,100万台に及ぶ。
ポルシェ本社は、ディーゼルゲート捜査で立ち入り捜査を受けたVW社傘下で最初のメーカーであったが、その後アウディはこれまで3回捜索を受けている。アウデイは不正を行った3.0LV6デイーゼルエンジンを製造したメーカーである。VWグループはCEOのマティアス・ミューラー氏(元ポルシェCEO)をディーゼルゲートの責任をとって解任したが、その1週間後に、ポルシェ幹部が拘束された。VWグループCEO交代が幕引きとならず検察の捜査が継続していることがポルシェ幹部逮捕で明らかになった。
名門ドイツメーカーへ拡大する不正捜査
2010年と2015年の間にポルシェを率いたミューラー氏は、デーゼルゲート以後VWグループのCEOとなって同社の立て直しを図っていたが、VWグループは、国内外の法的措置への対応で罰金と保証で250億ユーロ(310億ドル)を失っている。シュツットガルト検察局はVWグループが株主との情報共有を拒み、市場操作していた疑いでミューラー氏を調査していた。
デイーゼルゲートの本質は何か
先週金曜日、ミューラー氏は、VWグループCEOを解任され、新CEOは、組織改革を推進し、新指導体制での方向性(EVと持続可能なモビリティ)を打ち出した。VWから始まったディーゼルゲートはVW傘下メーカーのみでなく、他のメーカーに拡大した。BMWとメルセデスベンツ本社もこのため捜索を受けた。BMWは2月にエンジンが不正ソフトウェアがインストールされたことを認め、約12,000台の車がリコール対象となった。
VWグループ同様にドイツの自動車メーカーがデイーゼルゲートで支払う代償は大きい。しかし最も大きいドイツの損失は優良製品を供給する国としてのドイツの評価が崩れたことである。神戸製鋼の不正やタカタのエアバッグ問題が日本製品の品質イメージに打撃を与えたこともデイーゼルゲートと本質的に同じ問題である。デイーゼルゲートで明らかになったドイツメーカー同士のカルテルや政権工作疑惑である。政治を動かす自動車メーカーの構図がEU内のドイツの一人勝ちと重なることはドイツの国益を損ねることになった。
不正を追求することはもちろん必要だが、その背景にある「違法でも売り続けないと生き残れない」ことが普通になってしまった社会の歪みに目を向けなくてはならない。
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