Photo: anticorruptiondigest
ドイツ金融最大手のドイツ銀行は3月16日に、デリバティブの日常業務のなかで、クリアリングハウス(銀行間の手形取引所)に280億ユーロ(約3兆7000億円)を誤って送金したことを20日発表した。同行の時価総額240億ユーロ(約3兆2000億円)を上回る巨額で、誤操作をベアトラップ(bear-trap:誤操作防止)と呼ばれる内部のフェイルセーフシステムが機能しなかったことで、同行のITシステム、リスク管理への不信感が高まっている。
今回の誤操作はドイツ取引所のデリバティブ部門ユーレックス(Eurex)の清算・決済用の口座に送金する際に起きた。ドイツ銀行は2014年に担保支払いエラー、2015年には入力ミス(fat fingers:パソコンのキーボードをたたいている時、太い指の人は隣のキーに触れたりして、間違うことがあることからくる)で顧客のヘッジファンドに60億ドル(約7200億円)をご送金している。
誤送金を防止するために、2015年にドイツ銀行はフェイルセーフシステムを導入したが、今回の誤操作を感知、防止することはできなった。すぐに発見されたため金銭的な被害は生じなかったとはいえ、時価総額を上回る金額の誤送金で業務管理機能が機能していないことが確認されたかたちとなった。
解任された最高執行責任者(COO)のキム・ハモンズ氏は以前、ドイツ銀行を「私が勤めた会社のなかで最も機能不全な企業」と発言しているが、まさに、
元最高経営責任者(CEO)のジョン・クライアン氏の在任期間の再編成の3年間の成果に新たな問題を投げかけることとなり、将来性が不透明となった。
低迷するドイツ銀行の内情
ドイツ銀行は3年連続の年間損失を計上しCEOが交代したが、それでも監督当局からの厳しい監視下に置かれている。クライアン前CEOは、年頭に内部統制を強化し、銀行のオペレーティングシステムの数を45から32に減らした再編の第1段階の終わりに近づいているとしていた。
ドイツ銀行の新CEO、クリスチャン・セウイング氏は、ストックス600銀行インデックスで業績最下位のドイツ銀行の経営状態の再建に取り掛かることになる。しかし、同行の将来の方向性、特に業績不振の投資銀行事業に関しての方針や今回の内部業務管理やリスク管理の機能不全で、再建の将来性には期待できない。
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