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オーストラリアの人権団体「ウォーク・フリー・ファンデーション」が毎年発表する「世界奴隷指数」によると、「現代の奴隷」状況を余儀無くされている人々が世界で約4,030万人に上る。「現代奴隷」には、性労働や児童労働のため人身売買された人、生れながらにして奴隷状態にある人、強制労働者、強制結婚などを含む、脅し、脅迫、暴力、権力による強制などで拘束され奴隷状況にある人々を指す。
167カ国を対象に行われた調査で、人口比率で見る「世界奴隷指数」では北朝鮮が最も高く、10人に1人、約260万人が奴隷状況にある。奴隷の数ではインドが最も多く、推定1,835万人。インドに続き中国は338万人である。インド、中国、パキスタン、バングラデシュ、ウズベキスタンの5カ国で世界の約58%を占める。
アフリカでは、ナイジェリア、コンゴ民主共和国、南スーダン、中央アフリア共和国で奴隷状況にある人口比率が高い。これらの国では、貧困率が高く、紛争や独裁政権で法の支配が崩壊、もしくは生活が困難となった人々などが強制的に奴隷状況に追い込まれていくことが多い。
先進諸国における現代奴隷
現代奴隷が少ないと思われる先進諸国だが、アメリカでは800人に1人が奴隷状況にあると報告されている。英国では13.6万人が奴隷同様な労働や性労働を強制されている。奴隷制が廃止されている先進諸国では、不法移民や貧困者、児童などが人身売買によって性労働や奴隷労働を余儀なくされている。
奴隷労働は製造業のサプライ・チェーンの一部
多くのグローバル企業は奴隷状況が比較的高い国に製造拠点をもっているため、認識がないまま、奴隷労働で作られている製品を先進国消費者が買っていることになる。G20主要国への輸入製品のなかで、最も製造プロセスで奴隷労働が使われているとされる製品のトップ5は、①ノートパソコン、デスクパソコン、携帯電話、②衣類、③魚介類、④ココア、⑤サトウキビである。
奴隷労働が関わる可能性の高い製品を最も輸入しているのは米国(約144億ドル)に続き、日本(約47億ドル)、ドイツ(約30億ドル)、英国(約18億ドル)、フランス(約16億ドル)である。
奴隷制度に異を唱える人々も日々の生活で、奴隷労働に支えられた製品を購入し、食品を口にしているのである。しかも現代奴隷制度は巧妙にサプライチェーンに組み込まれているために、植民地政策や資本主義、白人至上主義などわかりやすい社会制度や人種差別によるものではない。当たり前の日常生活が、奴隷制度を容認し支援していることになる。