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五つ星・北部同盟の連立政権はジュゼッペ・コンテ氏を首相に指名、23日に前政権で現大統領のマッタレッラ氏は承認(注1)した。だが、経済・財務大臣候補のパオロ・サボーナ氏の指名を27日に却下し、イタリア政治混乱は避けられない状況になり、新政権樹立が不透明となった。28日には国民による大規模デモが予定されている。
(注1)イタリア憲法では、新政権発足にあたり、前政権の現大統領が新政権の首相や大臣候補を承認しなければない。候補が却下された場合、候補を変えない限り、新政権樹立ができない。
財務相候補サボーナ氏
イタリア金融界では著名人であるサボーナ氏は、ユーロ懐疑派エコノミストとしても知られている。イタリア銀行、ローマ銀行総裁、工業大臣、LUISS大学名誉教授などを歴任、金融界に限らずアカデミアでも高名な経歴を持つ。
82歳のサボーナ氏は、イタリアが欧州連合の加盟国となる前と加盟国となった後の経済状況をよく知る数少ないエコノミストである。イタリアやグローバル経済に関する数々の著書の中で、イタリアの無謀な公共支出や財務政策による債務拡大とその減少策を先送りしてきたことを批判してきた。単一通貨のユーロは、イタリア経済の低迷を深刻化、国家主権を弱体化したことで、社会的、経済的困難を引き起こしたと主張してきた。
近年には、EU構想は失敗で、「ドイツは2つの世界大戦で欧州の統一に失敗したことで、ユーロを使って経済統一を図っている」と述べ、将来イタリアはユーロ圏からの離脱に向けての準備をするべきだと提唱している。
五つ星・北部同盟の両党から高い支持を得ているサバーナ氏が考えるイタリアの方向性は、新政権の経済・財務政策となることは確かである。そのため、サボーナ氏の経済・財務大臣起用はイタリアのEU離脱の問題に発展していく可能性を秘めていた。そのため欧州委員会とドイツから圧力を受けたマッタレッラ大統領は、サバーナ氏の起用を拒否したのである。イタリア国民が選挙で選んだ政党による新政権樹立を阻止したかたちとなった。
今後どうなる
新政権樹立ができない状況に追い込まれた五つ星・北部同盟に残された策は、再選挙又はイタリア憲法第72条による大統領の弾劾である。対応策は今後両党により検討される予定であるが、数カ月間政治空白の状態が続くと見られる。この状態の中、イタリア国民は欧州委員会やドイツによる新政権樹立への圧力に対する不満や批判はこれまで以上に増すことになる。
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