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中国の国際空港で入国時に指紋データが義務付けられた。施行は4月30日で、14歳から70歳までの外国人に対して入国時に指紋データが収集される。収集は空港のパスポートコントロール手前に設置してある外国語に対応した自動読み取り機が行う。ただし24時間以内のトランジット旅行客の場合は手続きが免除される。外交官パスポートとEU Laissez-Passer(注1)あるいはVISAを所持している場合も免除される。
(注1)EU公務員用パスポート
上記については機内で説明されたが、5月12日に上海空港に降り立った筆者は奇妙な光景に出くわした。10台くらいのロボット読み取り機がパスポートコントロールに向かう旅行客の前に立ちはだかって、先を急いでいた旅行客が困惑していたのである。
読み取り手順は自動チェックイン機の要領で最初にパスポートを読み込むことから始まる。そうすると当該国の言語で音声が流れるしくみで、ペッパー君のような声だなどと考えていると、このロボットはなかなかきびしい指示を出してくる。
読み取り作業は多くの人が予想するように、指を独立に押し付けるのでもなければ親指だけでもすまない。読取り機は汎用のバーコードリーダーに専用の読み取りソフトを追加したもので、最初は親指を除く左手の4本を読み取り機に押し付けるとスキャナーで指紋パターンを読み取る。それが終わると次は右手4本、最後に両手の親指を同時に読み込んで終了。この間、読み取りが完全に終了するまで何度かやり直しを指示されるが、指を動かすとリセットされる。ただし開始時からの秒数が進んでいきどこかでタイムアウトになる。
読み取り後のOKシートが重要
終了するとOKと印刷した紙が出力される。この「OKシート」を持ち歩き提示することになるので捨ててはならない。パスポートコントロールでこの紙を見せると検証作業が待っている。左手4本を読み取り機にのせて先ほど入力した指紋データと比較して検証されれば、苦労なくパスポートコントロールを通過できる。うまくいけば画面のFACE(注2)とFINGERPRINTの2項目にチェック印が表示される。
(注2)ここでいうFACEとはIPhone Xのような3Dデータではなく正面からの2Dデータである。
これだけのステップだがパスポートコントロールにたどり着いた乗客は1/5に減っていた。指紋読み取りでなんらかのトラブルがあったのか犯罪歴があったのかは定かでないが、乗客が1/5にスクリーニングされたおかげで、指紋データを収集された乗客たちの待ち時間は大幅に短縮された。パスポートコントロールの係員の対応を観察すると、OKシートをみせるとホッとした表情で態度が良くなる。
監視社会への一歩には違いないがストレスの多いパスポートコントロール係官の仕事を軽減するには役に立っている印象を持った。中国ではThinking Statisticallyというビッグデータ活用の機運が高まっている。そこで扱われる究極の個人情報である指紋ビッグデータを何に使うのか、特に外国人のビッグデータを使う理由が不明である。