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中国政府は、孔子学院という文化交流団体を世界各国に大規模に設立しようとしている。このアカデミックな響きをもつ「研究所」は、海外の大学で中国語と文化の交流という名目で、実際には中国共産党宣伝部が教育環境に介入していることが懸念され、孔子学院への批判も徐々に高まっている。
米国には現在36州に渡り、103の孔子学院が大学との提携で存在する(2014年に米国大学教授協会調べ)。CIAの調査報告によると、中国の米大学やシンクタンクへの献金や支援は米国における教育・研究活動に大きく貢献したことは事実であるが、同時に共産思想の拡散にも寄与しているという。
孔子学院は活動のなかで親中な考え方の促進、中国に関するネガティブ研究を否定するなどの学術規制をかけ、中国共産党の概念や中国有利な研究を促進するなどを条件に支援を行ってきたことも明らかになっている。中国は年間約10億ドルを孔子学院を通じて、ソフトパワーと称して、中国の影響力の拡大に使われていることを明らかにしている。
2004年に韓国のソウルに最初の孔子学院が設立されて以来、(日本を含む)130か国の512の大学に設立された。特に問題視されているのは、孔子学院がスパイ活動を行う組織となり得る可能性である。国防総省の最高機密研究を行っている全米13大学(スタンフォード、MIT、アリゾナ州大学、ワーシントン大学など)で情報が中国側に渡ることが特に米議会や諜報機関で注目を集めている。孔子学院は単に文化交流団体ではなく、世界の世論の影響を海外で宣伝する戦略の一部である。
カナダのトロントには、世界で最大の孔子学院を設立されたが、この研究所に批判的な住民と中国政府が動員した地元の中国人と衝突し、トロント地区教育委員会は2014年に研究所閉鎖を決めた。それでも大半のアカデミズムは共産党プロパガンダやスパイ活動の隠れ蓑という裏の顔を見抜けない。浸透力を強める中国ソフトパワーは「今そこにある危機」なのだ。