Photo: bizwatchnigeria
欧州議会は7月5日、世紀の悪法として批判が多かったEUの著作権保護法案を否決した。この法案はインターネットのミーム機能(注1)など重要機能に規制がかかるとして、米国の大手IT大手だけでなく、インターネットの自由を擁護するユーザーも強く抵抗していた。法案にはフランスのストラスブールで開催された欧州議会で、議員ら318人が反対、278人が賛成、31人が棄権したため大差で否決された。
(注1)インターネット・ミーム(Internet meme)とはインターネットを通じて人から人へと、通常は模倣として拡がっていく行動・コンセプト・メディアのこと。
EUの著作権保護法案とは
この法案の目的は、ニュース配信者の収益拡大と、Googleが所有するYoutubeやFacebookなどのテクノロジー・プラットフォーム上の著作権のないコンテンツに対する取り締まりであった。しかしインターネット・ミームはSNSで情報共有・拡散の核心となるメカニズムで、禁止すればSNSは存在意味を失い消滅に繋がる。
メディア企業の収益性を損なう無料のオンラインニュースの台頭を背景に、AFPを含む主要な出版社は、第11条として知られるニュースメディア改革を推進している。しかしそれをインターネットで著作権のないコンテンツにリンクをはる行為に課金する「リンク税」と呼び強く反対するネットユーザーも多い。
第13条の代償は個人情報漏洩
特に、ユーザーがウェブ上に置いた著作権で保護されたコンテンツについて、オンラインプラットフォームに法的責任を負うようにする提案、第13条に批判が集まっている。
ポールマッカートニーをはじめとするミュージッシャン、主要な音楽レーベルや映画スタジオは、新著作権保護法成立を政治家に働きかけていた。しかしこの法案は、Youtubeの基盤となる技術プラットフォームによる包括的検閲につながるとして専門家はやネットユーザーは強く批判していた。ウィキペディアは、欧州議会投票に抗議して、水曜日に少なくとも3カ国で閉鎖されたほどである。
オンラインコンテンツの無断使用を取り締まる名目で、検閲によって逆に個人情報保護が犠牲になる恐れがある。また法的措置が実行された場合、利益を得るのは巨大なコンテンツホルダーのみであり、ネットの公平性が成立しなくなる。いかにもコンテンツ著作権を保護するように見せて、ネット上での情報拡散を抑制し検閲して反対意見を封じる権力者に都合の良いコンテンツのみが生き残るとしたら、特定コンテンツへのアクセス禁止より影響力が大きい。
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