Photo: pakistanpoint
トランプ大統領は早くて3月8日に、一部の国を除き、鉄鋼・アルミニウムに対する輸入関税を命じる大統領布告に署名する見通しである。鉄鋼に25%、アルミニウムに10%の関税が、署名から約2週間後に発効される。
安全保障への影響調査
米商務省は2017年4月から1962年通商法拡大法232条に基づき、鉄鋼製品の輸入が米国の安全保障に及ぼす影響についての調査を行ってきた。今回の関税措置の決定は、調査結果に基づいて商務省が提言、トランプ大統領が決定に同意したものである。
今回は米国の貿易に関する調査、主に米内産業に損害を与えるダンピングや輸入製品に関わる知的財産の侵害など不公正な貿易を調査するアメリカ国際貿易委員会ではなく、商務省の232条調査に基づいて関税措置が決定された。
アメリカ国際貿易委員会が実施する貿易調査では、不公平な貿易を行ってきたとする特定国の特定製品にアンチダンピングや相殺関税などのWTO協定で規定されている対応措置が発効される。現在、鉄鋼製品に関しては150件以上のアンチダンピングや相殺関税が適用されている。
232条調査では、幅広い鉄鋼製品や輸入国が対象となり、安全保障に対する脅威と商務省が判断した場合、大統領は米国国内規定に基づき、対象輸入製品の関税を含む是正措置を発効することができる。
これまで232条調査が実施されたのは26件で、うち米国の安全保障への脅威と認定されたのは石油関連の8件である。
輸入鉄鋼製品が米安全保障に与える影響
今では世界一の鉄鋼輸入国となった米国は、国防以外に交通システム、配電網、水道システム、発電システムなどのインフラセクターを含め、輸入に依存している。輸入鉄鋼製品に関する232条調査には、鉄鋼が安全保障上、特に国防省の国防条件を満たすうえで重要であり、鉄鋼製品の国内生産能力を確保することは安全保障上、不可欠と判断した。
価格の安い輸入鉄鋼製品は国内消費の30%以上を占め、輸入増加には歯止めがかからない状態が続いていた。2000年以降、塩基性精練炉施設は半減、鉄鋼産業における雇用は激減、鉄鋼産業全体が経済的に維持できない稼働率で運営されており、深刻な衰退状況にあることが背景にある。
Part2に続く
関連記事