米朝首脳会談の開催地候補にスエーデン

16.03.2018

Photo: nknews

 

 米朝首脳会談を巡っては、期待と同時に一向に進まない実務レベルの調整作業に不安感がよぎる人も多い。その開催地については国境DMZの他に遠く離れたスイスやスエーデンの可能性も浮上している中で、北朝鮮外交トップがスウェーデンに到着し、トランプ大統領とキム・ジョンイル首脳会談の準備を行うとみられる。

 

 安全保障理事会の非常任理事国であるスウェーデンの平壌大使館は、北朝鮮に対する米国、カナダ、オーストラリアの外交的利益を代表し(注1)、外交交渉の重要な役割を果たしている。北朝鮮外交通商部のリ・ヨンホ外務副大臣がスエーデンを訪問し、マゴット・ウォールストローム外務大臣と会談した。

 

(注1)スエーデン外務省は今回の会談が米国、カナダ、オーストラリアの利益を守り、国連安全保障理事会の緊急の案件である朝鮮半島の安全保障状況にも取り組むためのものであるとしている。

 

スエーデンの特殊性

 スカンジナビアの国々は、北朝鮮と長年の外交関係を築いてきた。平壌における外国の大使館は、1975年に同国に初めて設立されたスエーデンのもので、北朝鮮がスエーデンに大使館を置いていることから、開催地候補として可能性が高いとみられる。開催地を北朝鮮から遠く離れたスエーデンとすることは首脳会談の安全保障と、米国と北朝鮮の利益相反にならない。スエーデンは19世紀のナポレオン戦争以来、戦争に参加せず、「軍事非同盟」を外交政策の基本として推進してきた。スエーデンを候補地に選ぶ理由にNATO非加盟国であることが要因のひとつと考えられる。

 

 またスエーデンはODAで対GNP比第1位であり、国連のPKOに協力するなど国際社会への積極的な貢献が知られている。またスエーデンは核不拡散に関心を持っており、不拡散(北朝鮮)に関する安保理閣僚級会合出席の際に河野太郎外務大臣がマルゴット・ヴァルストローム・スウェーデン外務大臣と会談を行っている。

 

 北朝鮮外交官のスエーデン訪問の目的は、安保理が北朝鮮の非核化の実現と朝鮮半島の軍事衝突を回避し平和的解決を求める外交的努力を求める(国連)決議の実現のためとされている。表面的には具体的な開催地候補としてスエーデンの可能性が高まったが、実現するかどうかは16日のスエーデン外務省公式発表を待たなければならない。かつての「ならず者国家」はいまや米国と肩を並べ、堂々と国際外交のひのき舞台に躍り出たことは事実である。その背景に軍事力の拡充があることも確かだが、正当な外交手腕に頼る北朝鮮への対応はより困難なものとなることは間違いない。

 

 

 Updated 19.03.2018 21:23JST

16日に予定していた北朝鮮側との会談の内容についての公式発表はなかった。一方、北朝鮮のチェ・カンイル北朝鮮外交部北米次官はフインランド、ヘルシンキを訪れ、20-21日に北朝鮮の核兵器解体について協議すると見られる。なおスエーデンは過去、北朝鮮に拘束された米国軍人の解放に尽力した経緯がある。

 

 AFP=時事によれば朝鮮に拘束されている米国人3人の解放について、両国当局と仲介国のスウェーデンが協議に入っていることが明らかになった。米朝政府が最終合意に「ほぼ至った」と伝えられている。スエーデンとの協議内容の発表はなく交渉が延長されていたが、懸案であった米国人捕虜の3人解放となれば、北朝鮮の真意を米国側にアピールする格好の材料となるだろう。フインランドとの協議で核兵器解体の行程が示されれば、米国の介入抜きに核武装解除が現実となる。制裁解除を取り付けたい北朝鮮のしたたかな外交は確かなようだ。