翳りのみえてきたスマートフォン市場
半導体需要を支えたPCがスマホにとってかわられた理由は、使いやすく携帯できるからである。かつてはシーズンモデルが飛ぶように売れたPC市場だが、PCを駆逐した時代の覇者スマートフォン市場に凋落の影が忍び寄っている。巷にはキャリアの2年縛りに照準を合わせた新型モデルのCMが目立つが、世界のスマートフォン売上高は、9月までの期間、かつてない4四半期連続で減少し、メーカー各社が売上を伸ばすには新しい技術の投入が必要になってきている。
調査会社IDCによると、第3四半期に3億5,500万台の携帯電話機が出荷されたが、前年度比では6%の減少となった。IDCは、スマートフォン市場が2019年には成長に戻るとの見通しを維持しているが、現在は再成長の見通しを立てるには時期尚早としている。
一方、Strategy Analytics社の別の調査では、スマホ売上高が3億6000万ユニット分の8%減少した。同社は再成長予測どころか「世界的なスマートフォン市場は、今四四半期連続で減少しており、事実上不況に陥っている。」としている。スマートフォン業界は、キャリア補助金の大幅削減、更新率の引き上げ、一部の地域での在庫蓄積、そして魅力的ななハードウェア設計の革新のために、伸び悩んでいる。
Strategy Analytics社によると、AppleのiPhone販売台数は4,690万台で、全体的な販売台数の伸びを価格上昇が上回ったため、利益減には結びついていないが、IDC、Strategy Analytics両社の調査によると、首位のサムスンでさえも売り上げのわずか20%以上を占めるにすぎない。
一方、中国のHuaweiは14%以上で2位、Appleは13%で3位を維持している。第4位と第5位の中国のメーカーはXiaomiとOppoであった。この2社は新興メーカーで若いユーザー層に人気がある。中国のiPhoneユーザーは富裕層でそうではない若い世代は圧倒的にOppoを支持している。実際、中国の大都市をまわってみるとサムスンの販売店よりOppoの方が目立つ。
調査会社ですら中国の販売減速は、次世代規格5Gや第5世代ワイヤレスネットワークと互換性のある端末を市場に送り出すことで、来年に市場が回復する可能性があると指摘しながら、不安を隠せない。PC市場の凋落の道を歩み始めている印象は拭えないからである。
IDCのプログラム担当副社長は、スマートフォン全体の消費支出が減少したため、中国の国内市場は引き続き厳しい状況にあることを認めている。この市場が2019年以降に回復し始めるとするならば、それは5Gへの移行によって支えられた一時的なものである可能性が高い。
ユーザーがPCのシーズンモデルを買い控えるようになったのは、故障率が下がり性能が頭打ちになったため買い換える必要がなくなったためだ。スマートフォンがPCの歩んできた道を歩みだしたとしても不思議ではない。このことは半導体市場へも影響を避けられないだろう。