Photo: southeusummit
難民の支援を行っている仏NGOの France Terre d’Asile(FTDA)によると、年間320億ドル(約3兆5,200億円)に及ぶ規模の人身売買、人身取引が世界中で行われている。違法取引の中でも、近年麻薬密売や偽札ビジネスに続き、人身売買、人身取引は利益の高い密売となっているため、増加しているとしている。密入国あっせんのビジネスは過去最大規模である。
人身取引ネットワーク
8月にEuropolとスペイン警察当局は、ギニア、マリ、コートジボワール、セネガルなどアフリカからの300人の難民をフランスに密入国したことでスペインとフランスの人身取引ネットワークを摘発した。このような人身取引ネットワークは欧米への難民流入が始まった2015年以降増え続けている。
FTDA によれば、アフリカからフランスに渡る費用が1万ユーロであれば、密売業者はその4倍の4万ユーロを要求する。そのため、多くの難民は借金の肩代わりに犯罪、路上での物乞いや売春を強要される。難民にとって借金を返す当てもないため、女性の場合は借金返済を終えるまで売春が要求されることが多いという。
人身取引は国際組織犯罪とされ、人の身柄を拘束し、脅しや暴力により性的搾取、強制労働、奴隷、臓器摘出など様々な目的を含む非人道的行為である。紛争地域、貧困、弾圧から逃れるため、経済的に豊か先進国に行くことを望む人々がいる限り、また欧州の難民受け入れ政策が続く限り、人身売買の撲滅は難しいとされる。
増大する一方の人身取引ネットワークの背景には難民問題がある。そのきっかけを作ったのは欧州の寛大な移民政策であり、根絶には移民受け入れ政策との連携が不可欠となった。人身取引を取り仕切る組織の根絶には麻薬カルテル撲滅と同様の厳しい対応が必要になっている。
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