光合成のエネルギー効率が過小評価される理由

04.07.2018

Photo: sciencedirect

 

光合成は、生物の生命維持に必要な地球環境の保全において、最も重要な植物プロセスのひとつである。光合成は、太陽のエネルギーを使って水や二酸化炭素を空気から糖に変換する。しかしそのエネルギー変換効率の低さは謎であり光合成の間に生成されるエネルギーの30%以上が、光呼吸と呼ばれる過程で無駄になると長い間考えられてきた。実際今でも多くのエネルギー科学の専門家が光合成を非効率的なエネルギー変換の例えに使っている。

 

「光合成はエネルギー変換効率が低い」は間違い

カリフォルニア大学デービス校の研究チームの新しい研究は意外にも、光呼吸がエネルギーを無駄にせず、土壌から吸収された硝酸塩をタンパク質に変換する硝酸塩同化を促進することを示唆している(Bloom and Lancaster, Nature Plants online July, 02, 2018)。

 

光呼吸中、ルビスコ(注1)と呼ばれる蛋白質は、CO2ではなく大気中の酸素を糖類に結合する。これはエネルギーを無駄にして糖類合成を阻害すると考えられていた。

 

(注1)リブロース-1,5-二リン酸カルボキシラーゼ。カルビン-ベンソン回路で炭素固定反応に関与する酵素。

 

 

ルビスコにはマンガンが必須だった

ルビスコはまた、金属、マンガンまたはマグネシウムのいずれかと結合する。マンガンを取り込むと、光呼吸は硝酸塩同化のためのエネルギーを生成し、淡白質合成を促進する。しかし、ルビスコの生化学に関する最近のインビトロ研究のほとんどは、マンガンが存在しないマグネシウムの存在下で行われており、そのため光呼吸のためのエネルギー効率の低い経路のみが観測される。

 

これは植物の光合成のエネルギー変換効率が低い根拠になり、過小評価につながる。この研究で「光合成の間に生成されるエネルギーの30%以上が、光呼吸と呼ばれる過程で無駄になる」ことが否定された。植物光合成のエネルギー変換効率低さが過小評価されて来た理由が明らかにされたことで、地球モデルのエネルギー収支の見直しが必要になるかもしれない。