Credit: Nature Nanotechnology
北海道大学電子科学研究所の研究チームは、従来の方法の11倍の光エネルギーを変換する、金および金ナノ粒子層と30ナノメートルの半導体薄膜の多層構造で可視光の85%を吸収する光電極を開発した(Shi et al., Nature Nanotechnology online July 30, 2018)。
持続可能な社会の実現を目指して、可能な限り少ない材料で、太陽からの可視光エネルギーを利用する革新的な太陽電池や人工光合成(光触媒)システムの開発ニーズが高まっている。
研究チームは、半導体に担持された金ナノ粒子を用いて、広いスペクトル範囲で可視光を吸収できる光電極の開発を目指した。しかし、金ナノ粒子の層を単に適用するだけでは、狭いスペクトル範囲で光を取り込むだけで、十分な量の光吸収をもたらさなかった。
Credit: Nature Nanotechnology
新しい研究で、研究チームは光吸収を高めるために、100ナノメートルの金膜と金ナノ粒子の間に30ナノメートルの二酸化チタン薄膜を挟んだ。金ナノ粒子側から光を照射すると、金膜は鏡として働き、2つの金層の間の空洞に光を閉じ込め、より多くの光を吸収する。
研究チームは全可視光の85%以上が光電極によって吸収されることを確認した。これは従来の方法よりはるかに効率的である。金ナノ粒子は、特定の波長の光を吸収する局在プラズモン共鳴と呼ばれる現象を示すことが知られている。 研究チームの光電極は、酸化チタン層に閉じ込められたプラズモンと可視光が強く相互作用し、広範囲の波長の光を金ナノ粒子に吸収させる新しい条件を作り出した。
金ナノ粒子が光を吸収すると、そのエネルギーが金の電子励起を引き起こし、励起電子が半導体に移動する。光のエネルギー変換効率は光トラップ機能を持たないものよりも11倍も高い。また、電子が水素イオンを水素に還元し、残りの電子ホールが水を酸化して酸素を生成する水分解反応に応用できる。