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電磁波が人体に与える影響は賛否が別れる議論だが、はっきりしていない、というのが事実である。となると放射線量による発癌リスクのLNT説のように閾値がなく人体の吸収量に比例して、線形の統計的リスク増大を覚悟すべきなのかもしれない。
電磁波の紫外線の有害性も大きいが、最近、紫外線帯に接する可視光の短波長領域(青色光)がLED光が人体に悪影響を及ぼすとする研究が発表された。スペインの研究グループは2,000人の癌患者と正常な人に対して夜間人工光(LED)照射効果を比較した結果をまとめた。
研究によると強い人工光を浴びた場合、乳癌リスクが1.5倍、前立腺癌はそれを越える癌発生リスク増大があった。これまでの研究では衛星イメージを用いて都会の夜間での人工光の強度を計算していたが、この研究では分光して青色光の強度を実測した。重要なことは自然光(可視光)の照射が癌発生確率に影響を与えないのに対して、人工的光(青色光)のみが影響を与える点だ。
青色光は、脳内クロックを制御する信号伝達に関わる化学物質メラトニンを抑制する波長である。メラトニンはヒトの細胞内クロックの同期を維持する上で重要な役割を果たしているホルモンである。これらの細胞クロックの中断が癌発生リスクを高めると考えられている。細胞を損傷し、DNAを切断する放射線効果と異なるメカニズムだが癌発生に結びつく点では同じである。
都会の夜が消える〜地球規模の光汚染
メラトニンは抗酸化物質としても作用することが知られており、乳癌や前立腺癌などの特定のホルモン感受性癌の増殖を抑制するのに適切なレベルが必要とされる。青色光は、一部の屋外LED以外にも存在するが、特に3,000K以下の色温度のLEDが好ましい。色温度は、光のスペクトルの青色、緑色、黄色、赤色成分比率を表しており、青色光の色温度は高い。
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夜間人工照明をオンにするとメラトニンを抑制する可能性が高くなるが、青い光はスマートフォンやタブレットのデイスプレイでも放出されている。
米国の薬事協会は屋外LEDが3,000K以下にして「有害な健康および環境への影響を最小限に抑える」ことを推奨している。実際にカリフォルニア州デイビスなどのいくつかの都市では、屋外のLEDを取り外して色温度の低いものに置き換えている。