NASA衛星データが警告する太陽極小期

16.11.2018

Credit: NASA

 

太陽黒点がほとんど観測されなかった2018年は、11年周期の太陽活動が衰退し太陽極小期を迎えていることを示している。地球上の高空の温度変化は、気候変動を含む地球上の気象に大きな影響を与える可能性は低いと考えがちだが、NASAは地球の大気の変化を計測する衛星観測に基づいて、黒点の欠如が地球の寒冷気候に結びつく恐れがあるとして警告している。地球の大気中の粒子運動エネルギーを上昇させ地球を加熱する紫外線が減少し地球が冷却されるからである。

 

 

Credit: NASA

 

NASAはCO2とNOからの赤外線放射を監視するTIMED((Thermosphere, Ionosphere, Mesosphere Energetics and Dynamics))衛星の観測結果は(現在の太陽活動の衰退傾向が続くなら)、地球寒冷化の恐れがあるとしている。全体的なエネルギーバランスにおいて重要な役割を果たすCO2とNOの動きを追跡する「熱圏気候指標」(TCI)の数値(単位:W)は、CO2やNOなどの分子が空間に放出される数を示す。

 

数値化された現在のNOの赤外線出力(330億W)は、太陽活動のより活発な期間の1/10である。11年周期の太陽活動は、現在、衰退期が継続していて太陽極小期(ソーラーミニマム)(下図)に入りつつあることを示唆している。

 

 

Credit: Spaceweather

 

2018年の初めに、NASAのSDO(Solar Dynamics Observatory)衛星に搭載されたカメラで異常に活動が弱まった太陽表面が記録されている(下図)。NASAの計算によると、太陽は2019年または2020年に太陽極小期に達する。太陽極小期は地球への宇宙天気の影響を強め、通信とナビゲーションが混乱する可能性がある。

 

太陽の中での黒点活動の欠如は、星の磁場の活動低下によるものである。太陽極小期では、太陽黒点や太陽フレアなどの特定のタイプの活動は減少するが、コロナホールなど長期的な現象も増加すると予想される。太陽活動の衰退は地球寒冷化だけではなく地球環境に強い影響を与えることを認識して対策を立てる必要がある。

 

1645-1715年の太陽極小期(マウンダー極小期)では太陽黒点が減少し中世のミニ氷河期の原因となった。太陽黒点と地球寒冷化の相関ははっきりしている。特に欧州と北米は打撃が大きい。周期と衛星観測で太陽極小期の兆候がみられるいま手を打たなければ、マウンダー極小期から人類は何も学んでいないことになるだろう。