ウラン同位体で検証された海洋無酸素事変2(OAE2)の酸素枯渇

08.03.2018

Photo: researchgate

 

海洋無酸素事変2(OAE2)は大量絶滅など地質時代の境界に起きた境界事変のひとつで、地球の歴史を解明する上で境界事変は重要な手がかりとして最近、注目を集めている。ニュージーランドのオタゴ大学の研究チームは海洋無酸素事変を引き起こす要因となった大気中に放出された炭素量を地球気候モデルを使って再現した結果、大気のCO2量が地球環境に重大な影響を与えることを見出した(Clarkson et al., PNAS online Jan. 22, 2018)。

 

海洋無酸素事変2では海洋の広範囲に渡って溶け込んだ酸素が欠乏したため、有機物の堆積物が大量に堆積したと考えられている。太平洋の海洋無酸素事変2については高分解能の炭素同位体比および黄鉄鉱化度の測定によって、この期間の大部分で太平洋の大陸縁辺海域は無酸素状態でなかったことがわかっている(Takashima et al., Nature Comm. 21233, 2011)。

 

現在でも海洋の一部に見られる酸素欠乏はこの時代には気温が高く生物が腐敗して酸素を消費して海洋全体が無酸素状態になるほどであった。地域差があり有機物(生物)が多い地域では酸素消費が多く、無酸素状態になりやすい。気温が高くなれば生物が増え、気温上昇は海洋の酸素欠乏を引き起こす。研究チームは測定された古代の酸素量を地球気候モデルのシミュレーションと比較した結果、CO2増大(あるいは気温上昇)が海洋無酸素事変を引き起こしたことを明らかにした。

 

古生代のCO2排出は火山の噴火によるものであったが、人間活動によるCO2排出で大気中濃度の増大傾向が続いている。現在の海洋では0.3%の地域が酸素欠乏状態にある。ちなみに古代の海洋の無酸素地域は8-15%と極端に多い。

 

海洋無酸素事変は100万年ほど続いたが、途中で海洋酸素量が回復した時期があった。それはCO2排出源であった火山活動が治った時期で、寒冷化と同時に海洋の酸素量増大が起きた。海洋無酸素事変2は大気への気温の上昇と大気へのCO2放出量増大によって引き起こされたことが明らかになった。