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突然の局所的な集中豪雨が猛威を振るったが、「過去に経験したことのない(想定外の)豪雨」という表現が珍しくなくなった今日、異常気象は世界各国で観測されている。米国では猛烈なハリケーンが南フロリダを襲うたびにカテゴリー6(風速200mph〜毎秒89m)を記録するかどうかが関心事となる。
より暖かい気候でハリケーンのもたらす降雨量が増え、水害が拡大する。現在の温暖化の傾向が続くならば、20世紀末までに最高の風速が230mphにもなる可能性がある。竜巻で言えばF-4のカテゴリ6ハリケーンが現実味を帯びてきた。ハリケーンというと縁遠い印象だが、勢力の強い低気圧現象が強大化する原因は共通で台風やモンスーンにも当てはまる。
風速の増大
1970年代初期に開発されたサフィール・シンプソンのハリケーンのスケールでは、ハリケーンの規模は風速が74~95mphのカテゴリ1から、157mph以上の風のカテゴリ5までの5段階であった。
しかし風速が190-200 mphに達すると、さらにカテゴリ6を想定しなければならない。昨年は、180mphに到達した2つのカテゴリー5のハリケーン、イルマとマリアがフロリダを襲った。そして、2015年に、メキシコの太平洋岸から離れて、ハリケーン・パトリシアは、215mphという過去最大となる風速を記録した。
移動速度の低下
現実には風によるカテゴリー区分に意味はなく、嵐、雨、雨、竜巻、潮流などの被害を及ぼす項目を評価する方法が求められる。 風速の他に被害に結びつく因子としては移動速度がある。最近の研究では、熱帯低気圧は1949年以来移動速度が10%低下し、この傾向が続くと予想されている。昨年のハリケーン・ハーベイのように、ハリケーンが特定の地域に居座ることで水害が発生する。ハーベイによってヒューストンで4フィート以上の降雨で何千もの家屋が水没した。
降雨量の増大
ハリケーンは、より多くの雨を降らすことが予想されている。暖かい空気は冷たい空気よりも多くの水を保持するからである。最近の調査では、ハリケーンが平均24%の雨を発生させる、壊滅的な洪水を引き起こす恐れがある。
地球温暖化が降雨量を最大38%増加させたという研究もあるが、これは平均気温の話ではなくエルニーニョの影響が大きい。ハリケーンの強大化を地球気温の上昇と結びつけることはできないが、気候変動が、ハリケーンを北と東に移動させるジェット気流を変化させる可能性がある。
増大する大型ハリケーンの降雨による被害を最小限にするには、ジェット気流の蛇行を含む気候変動の細かい記述をモデル化する必要がある。降雨による経済的被害、人的被害を回避するために、日本でも高度シミュレーション研究に力を入れるべきだろう。