Photo: Nature
英国、ドイツ、ロシアの研究チームは、グラフェン端の磁気的観測に成功し、特異な磁性の存在を証明した(Luis and Coronando, Nature online May 30, 2018)。グラフェンは、シートを形成する炭素原子が無限につながった2次元層で、高い伝導性を持つ2D物質のため基礎物性や応用について極めて多くの研究が行われている。
グラフェン応用のひとつは、量子コンピュータであるが、グラフェンシートの端部に理論的には予測されている磁性をこのために利用できていない。今回の研究では、エッジ磁性をはじめて観測したことで、この障害を克服する方法を見つけたことになる。
以前の研究のグラフェンシートの端部に磁気を持たせる方法は、それらをジグザグ形状に配置させることであったが、グラフェンをこのような形状にすることが、プロセスで導入される欠陥のため極めて困難であった。研究チームは、この問題を克服するために、溶液中のグラフェンの合成で均一な形状のシートを生成できることに注目した。
この技術を採用して均一なジグザグ形状のナノリボンを作成し、ナノリボンに磁気ニトロニルニトロキシド分子を結合させた結果、化学的に安定なグラフェンナノリボンの磁気特性を調べることができた。
グラフェンの端に磁気的状態が存在することを示すことに加えて、スピン軌道カプリングの強さとスピン速度が平衡に達した時間も測定できた。注目すべきは、デコヒーレンス時間は約1マイクロ秒であったことで、応用には短すぎるという不安はなくなった。また不対ラジカルの電子がエッジスピンと相互作用している証拠もみつかり、量子計算機への応用に一歩近ずいたといえる。
Credit: Nature