グラフェン酸化物で進展するLi金属バッテリーの電極問題

16.03.2018

Photo: mit.edu

 

エネルギー密度で圧倒的に優位な第三世代LiイオンバッテリーとなるLi金属バッテリーだが、10倍高い容量となる代償(致命的な欠点)は、充放電サイクルと共に電極に移動する際の金属Liの不均一な成長で、この電極問題のために実用化されていない。イリノイ大学の研究チームはこの問題をグラフェン酸化物ナノシートを電極間に挿入することで、金属Liの平坦化を実現した(Foroozan et al., Advanced Functional Materials online Feb. 07, 2018)。

 

金属Liバッテリーは軽量でエネルギー密度が高いため、実用化されれば従来のバッテリーを置き換える潜在能力がある。しかし泣き所は充放電サイクルを繰り返すと電極が劣化することであった。電極間を金属Liが往復するにしたがって電極上にデンドライトと呼ばれる樹枝状の構造を生じ短絡して使えなくなるからである。

 

Liイオンバッテリーでは電極間にセパレータ(電解質膜)がある。セパレータは多孔質高分子膜で電荷を運ぶキャリア(Liイオン)のみを通す。研究チームはLiイオンバッテリーのセパレータのように、Liイオンの移動量を中間膜で制御することを試みた。研究チームは走査型電顕で電極を調べ、グラフェン酸化物ナノシートをことしファイバーグラスを用いれば電極上の金属Liの成長を均一に保てることをみいだした。

 

研究チームの第一原理分子動力学シミュレーションによって、金属Liがグラフェン酸化物と物理吸着した中間状態を経ることで透過速度が一定に保たれ、均一な成長となることもわかった(下図)。この研究によってグラフェンに代表される2D物質によって金属Li成長の制御が可能となったことで、金属Liバッテリー実用化への道が開かれた。

 

下図(上段)に示すように電極のLi金属成長の平坦化によってバッテリー寿命が飛躍的に改善されていることがわかる。下段左は中間層へのLiイオンの吸着・脱離の模式図、右側はデンドリマー形成時(左)と平坦成長時(右)の構造を示す。

 

 

 

 

Credit: Advanced Functional Materials