タンデムセル化で次世代太陽電池を目指すペロブスカイト

26.03.2018

Photo: genesisnanotech.wordpress

 

太陽電池の主流であったシリコンにエネルギー変換効率で肩を並べるペロブスカイトはコストを含めて、伸び悩む太陽エネルギー利用の救世主と期待されている。ケンブリッジ大学の研究チームはカリウムを添加することで、ペロブスカイト太陽電池のエネルギー変換効率が増大し次世代太陽電池の主流となる可能性が高まった(Abdi-Jalebi et al., Nature 555, 497, 2018)。

 

ペロブスカイト材料の欠陥はキャリア電子を捕獲してエネルギー変換効率を低減する。研究チームはヨウ化カリウム溶液で欠陥密度を大幅に低減できることを見出した。次世代太陽電池ではエネルギーギャップの大きいペロブスカイト材料をシリコン上面に配置したタンデム構造が有望視されている。

 

ペロブスカイト材料は1986年の高温超伝導発見で物性研究の最先端に躍り出たが、太陽電池材料としては研究歴史は数年前からで近年の急激な効率上昇は目を見張るものがある。一方、高効率材料としての問題点は結晶格子の欠陥と太陽光照射でイオンの位置が変化してバンドギャップが影響を受ける決勝固有の問題である。

 

研究チームはシリコン層あるいは組成の異なる別のペロブスカイト層とのタンデム構造としてカリウム添加でバンドギャップを最適化することを試みた。カリウム添加は簡単でヨウ化カリウム溶液を加えるだけで良い。カリウム添加エロブスカイト太陽電池のエネルギー変換効率は21.5%で、安定性も向上した。また2種のペロブスカイトタンデムセルの理論的な最大エネルギー効率は45%、実用的には35%となる 

 

Credit: Nature

 

上図a、bはそれぞれn型、p型電極接合でキャリアが長寿命であることを示している。さらにタンデム化(c)で長寿命かでき、カリウム添加(d)で量子効率が飛躍的に高まることがわかる。

 

ペロブスカイト材料は従来の無機結晶の枠組みを超えた有機ハイブリッドペロブスカイト材料の登場で格段に広範囲の物性を持つファミリーを形成することとなった。特にスピントロニクス材料としても注目されている。ひとつには結晶の対称性が良いため、舞台となる素性の理論的な理解が可能であることにある。

 

 

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