ダイアモンドナノ結晶を用いた高効率磁場測定デバイス

23.09.2018

Credit: Science Advances

 

ダイアモンドはGe、Siと同じ典型的なIV族の元素だがエネルギーギャップが大きいため絶縁体であるが、ドーピングによってワイドギャップ半導体の物性を持たせることができる。カリフォルニア大学バークレイ分校の開発チームは、窒素をドープしたダイヤモンドで磁場検出器の電力を大幅に削減する新しいデバイスを開発した。このデバイスは低コストで、エレクトロニクス、地球磁場計測、さらには生命体を対象とした磁場測定方法が変革される可能性がある(Labanowski et al., Science Advances online Sep. 05, 2018)。

 

従来の磁気センサーは一般的に大型で、動作温度領域が狭くまた高コストである。窒素をドープしたダイヤモンドで製造した新型デバイスは、ナビゲーションから医療画像、自然資源探査まで、多くのアプリケーションでこれらを置き換えることがでると期待されている。

 

従来のダイヤモンドベースのセンサーで磁場を測定する際には、最初に1~10ワットのマイクロ波放射で活性化させるときに電子回路が損傷を受ける欠点があった。研究チームは、1/1,000の電力のマイクロ波で微少なダイヤモンドを励起する新しい方法を見出し、携帯電話のようなエレクトロニクスに適合することのできる磁気検出デバイスを実現した。

 

 

Credit: Science Advances

 

欠陥導入ダイヤモンド

ダイヤモンドを窒素ガスの噴流に衝突させると、高度に規則化された炭素原子の一部を叩き出し、窒素原子で置き換える(NV中心)。NV中心は高感度センサーとして使うことができますが、データ読み込みには電力が必要なため、アプリケーションは限られていた。

 

磁場を検出するには、最初に標準的なマイクロ波パワーの約1/100倍(平均的な携帯電話の消費電力の10倍)に相当するマイクロ波放射で、NVのセンターを照射する。次に、レーザー励起で窒素原子から放出される光の強度を測定する。磁場の強さは、放出されたレーザー光の強度に依存するので、放出された光の強度から、電界強度が測定できる。

 

このデバイスの鍵となるのは、マルチフェロイック物質の薄膜に固定された数千個のNVセンターを含むダイヤモンドナノ結晶である。これによってマイクロ波の高効率伝達が可能になり、センサの消費電力を大幅に低減し、多岐にわたる応用に利用することができる。

 

 

生体と地球のイメージング

磁気センサの医療用途には、磁場を用いて脳波を測定する脳磁気イメージング、または磁界を用いて心機能を画像化する心磁気イメージングが含まれる。現在、これら装置はコストが高く一般の普及が少ない。

 

低消費電力のNVセンサを使用すれば、脳磁気イメージング装置をヘルメットのようなものに変えて、サイズとコストを大幅に削減することができる。またこのセンサは、地下の希土類金属を探索したり、地球磁場を計測する飛行機のナビゲーションシステムにも利用が可能である。パワートランジスタ応用はワイドギャップ半導体としてSiCで開花しつつあるが、さらにその先にある材料ダイアモンドの応用が始まった。