Credit: Wiesner Group
歩きながらでも電車に揺られながらでも、家でもオフイスでも毎日の生活はどこかでネットに依存している。携帯電子機器で世界は巨大なネットワークにつながった。現代社会ではスマホやノートPC抜きに生活は成り立たないといっても過言ではないだろう。しかし行き来する情報量の増大に伴って、電子機器の消費電力も増大の一方で、機器のチャージ時間の短縮が望まれている。
コーネル大学の研究チームは、この要求に応えるために、秒速チャージの可能性を秘めたエネルギー貯蔵システムを開発している。そのアイデアとはバッテリーのアノードとカソードを非導電性セパレータの両側に配置する代わりに、エネルギー貯蔵に必要な数千個のナノ孔を有する自己組織化3Dナノ構造を相互に連結するものである(Werner et al., Energy & Environmental Sci. 5, 2018)。
この3Dアーキテクチャは、簡単にいえば無数のナノ電極がセパレータで被覆され組み合わさったバッッテリーである。バッテリー内部が自己組織化で細かい電極の入り組んだ構造のため、不要な空間によるエネルギー損失が無視できる。 電極間がナノスケールになるので、電極面積が飛躍的に向上し従来のバッテリよりもはるかに短い時間でエネルギーの出しいれ(充放電)が可能となる。
ケーブルをソケットに入れたときに、ほんの数秒で、バッテリがチャージされるようになるこのナノ構造体は、研究チームが長年に渡って太陽電池や超伝導体なデバイスで採用してきたブロック共重合体の自己組織化に基づいている。研究チームは自己組織化フォトニックデバイスの原理をエネルギー貯蔵用の炭素材料に適用したものである。
ブロック共重合体自己組織化によって生成されたアノード(炭素薄膜)は、40nmのオーダーの数千の周期的な細孔を持つ。これらの細孔は、電解重合によって厚さ10nmの電気的に絶縁性でイオン伝導性を有するピンホールのないセパレータが得られた。
Credit: Energy & Environmental Sci
次のステップは、アノード材料(この場合は硫黄)を、添加することであるが、硫黄は伝導性でないので、PEDOT(ポリ[3,4-エチレンジオキシチオフェン])として知られる電子伝導性ポリマーを用いる。放電中および充電で硫黄が膨張すると、ポリマーが分解され、再び収縮すると再結合しない3Dナノアーキテクチャが得られる。