Credit: Nature
ワシントン大学の研究チームのマリアナ沈み込み帯に関する新しい研究では、地球の水循環の従来の知見を大幅に修正する結果となった。プレートテクトニクスを介して地球の内部に流入する水量は過小評価されていたことがわかった。実際には、この調査によるとマリアナ沈み込み帯の水量は、定説より約4倍も大きいことが明らかになった(Cai et al., Nature 563, 389, 2018)。
地球のマントルは数多くの構造プレートでできたパズルのようなもので謎が多い。これらのプレート同士が衝突し、一方が他方の下を滑るときに、大量の水は沈み込み帯に引きこまれる。熱と圧力の組み合わせによって、水は化学的に「水を(結晶中に)含んだ岩」に姿を変える。水が取り込まれた鉱物は、プレートの中に閉じ込められ、地殻に深く引き込まれることで深部へ輸送される。
ワシントン大学(セントルイス)の研究チームは、このようなメカニズムで深部に取り込まれている水量を推定した。研究は海面から最も深い場所にあるマリアナ海溝の沈み込み帯を対象とした。
研究チームは、トレンチに沿って設置された地震計を用いて、水中地震活動を観測し、地球の内部を可視化した。海底から20マイル下のマリアナ島と太平洋プレートのうねりを一年間観測した結果、マントルは以前考えられていたよりも4倍の水分を含んでいることがわかった。マントルに輸送された水は大洋のすべての水量と同じ程度に豊富なのである。
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世界中のいくつかのトレンチにはフォールトが多いものも少ないものもあるが、それでも3倍以上の海洋水がマントル上部に輸送されていることは驚きである。研究チームは沈み込み帯に輸送された水のほとんどは、火山噴火の際に水蒸気として追い出されると考えている。
これら結果は、水の摂取量と流出量の急激な不均衡を示唆する。地質学的に言えば、マントルに移される水の量が増えると、水面には水が少なくなるはずであるが、過去5億5千万年の間、大洋は大きく変化していない。アラスカと中米のトレンチでの同様な研究が行われれば、この謎の答えがみつかるかもしれない。
結局、地球内部については不明な部分が多く、惑星移住を考える前に人類生存の鍵となる水サイクルについて明らかにしなければならない点が多い。移住先の惑星に水圏を人工的に形成するために重要となるであろう。