Photo: mit.edu
MITスピンオフ企業Ayarは、データセンター処理能力の増強と省エネルギーを目的として、フォトニクスチップをシリコンチップに組み込んで光通信と計算機を結合する。フォトニクスチップでチップ間通信のエネルギー消費が30-50%削減でき通信帯域を10倍上げることができる。
これまでデータセンターのボトルネックは帯域幅と消費電力であった。AyarはMITで開発したフォトニクス原理をシリコンチップメーカーのGlobal Foundriesでシリコンチップに組み込んだ光入出力システムBrilliantを製品化、昨年12月に市場投入した。
チップ設計において近年、ムーアの法則の限界が深刻になりつつあるが、現実にコンピュータに使われるシリコンチップ間の配線は銅線で接続されており、その発熱でチップの処理効率が低下する。このためデータセンターのサーバー能力はチップの能力ではなく配線によって制限されることになる。
IntelやIBMなどの半導体大手もオプトエレクトロニクスチップをシリコンチップ上に実装しようとしていたが、CMOS製造プロセスとの相性が悪く実用に至っていなかった。Ayarの開発チームではMITとIntelやIBMからのスピンオフ技術者が一体となって、光検出器、光変調器、導波路などの素子をCMOSプロセス内で実装できるようにした。
その結果、850個の光学素子と7千万個のトランジスタを搭載したフォトニクスオンチップ素子Brilliantの開発に成功した。Brilliantは従来のシリコン素子のI/Oをフォトニクス素子で置き換えたもので、既存のCMOSテクノロジーの中でフォトニクスを生かす最初の試みである。
Ayarの特徴は従来のシリコンチップでこのボトルネックの問題を解決しようとしている点だ。応用としてデータセンターのサーバーの問題(発熱とエネルギー消費)が解決できる見通しが立ったことのインパクトは大きい。
Credit: MIT