中国がチベットで世界最大規模の人口降雨

03.09.2018

Photo: sciencealert

 

ジオエンジニアリングとは高空から微粒子を散布して、人口の雲を作り日射量を減らすことで地球を冷却、人工雨で砂漠化を防ぐ技術である。環境保全や効果に付いて賛否両論が渦巻く中で、水不足で砂漠化が進んでいる中国は本格的なジオエンジニアリングに取り組んでいる。中国は、チベット高原で歴史上最大となる人工雨実験を計画している。

 

このプロジェクトでは、年間100億立方メートルの地域降水量を増加させる目的で、チベット山脈に数万個の燃料燃焼室が設置される。この計画は、中国の清華大学で2016年に開発されたた「天河(Tianhe)」や「スカイリバー(Sky River)」というプロジェクトの延長線上にあり、160万平方キロメートル(約62万平方マイル)に及ぶ巨大な地域に余分な雨をもたらすことが期待されている。

 

それはアラスカよりも大きく、スペインの約3倍の大きさとなる。中国の年間水使用量のおよそ7%を占める巨大なチベット地域は、計画が成功すれば世界最大の人工降雨量をもたらし中国の水不足問題を解決すると期待されている(South China Morning Post)。

 

科学者が何十年も前から取り組んできたテーマであるジオエンジニアリングは、中国は世界中のどこよりもこのコンセプトに深く投資している。チベット地区に設置される巨大な燃焼室は雨と雪を生成することができる水分を含んだ雲を生成するために核となる沃化銀粒子を放出する。研究チームによれば、これまで、チベット、新疆、その他の実験用地に500本以上のバーナーが高山斜面に配置されている。

 

しかし広範囲にわたって人工降雨を作成するということは、より広範な地球の気象パターンに影響を与える恐れがある。きっかけ(核形成)で雨がどこかで起こることは、他の場所の降雨量に影響するからである。その場合、中国のチベットの降雨は他の地域への降雨を減らす恐れがあり、他の国の水資源を中国が奪い取ることになりかねない。地球全体の環境保全と安全面の保証がなされないままに、チベットの人工降雨計画が強行されようとしている。

 

映画「2012年」で地球の大洪水を救うために巨大な「ノアの方舟」を建設することで「救世主」として描かれている中国だが今度は水資源を盗み取り、地球環境を悪化させるかもしれない。公害に無関心で行きすぎた都市化計画が砂漠化の原因ならば、せめてジオエンジニアリングで世界を巻き込むことは避けてほしい。

 

関連記事

ジオエンジニアリングの功罪

成層圏ジオエンジニアリングの科学的評価

農作物への負の効果となるジオエンジニアリング