Photo: sonsofgodblog
地球の磁場は、地球の対流液体鉄の外側コアに起因するが極点の移動速度が近年加速していることから、これが磁場逆転の前兆と捉える説が浮上した。地球磁場は有害な太陽放射から地球表面を保護しており、これは地球上の生命が維持されるために、不可欠な存在であるため、磁場逆転に伴う磁場変化は地球に深刻な影響を与えるため、磁場逆転の恐怖を誘うこととなった。
確かに地球磁場は、地質学的歴史の中でさまざまな時間スケールで変化していて、過去200年間の変化は逆転につながる可能性のある減少であった。磁場の変化は地球深部の変化を反映していいて、その極端な変化は逆転と地磁気エクスカーションという2つのケースがある。 前者の事象の間、磁界の強さは減少し、磁極は極性が急速に反転し、極性は反転する。いわゆる地磁気逆転である。
一方、エクスカーションでは磁極は移動していくが最終的には元の極性への復帰する。過去数世紀にわたる磁場の強さは強く減少し、地球磁場逆転説の契機となった。 リバプール大学の研究チームは、過去のエクスカーション事象を分析すれば、地球の磁場が反転またはエクスカーションの初期段階にないことが推測できるとしている(Brown et al., PNAS online Apr. 30, 2018)。
これまで34,000年前と41,000年前に起きた大規模な磁極移動事象では、ほぼ逆転に近い場所に移動後に復帰した。現在の南太平洋異常(注1)にこれらの事象が類似しているが、現在の異常はこれよりはるかに小さく、この研究では磁場逆転の証拠にならないとしている。
Credit: I. Michaelis, GFZ
上図は2014年4月から2017年6月までの南太平洋異常領域で発生した放射線による衛星障害マップ。
(注1)南大西洋地磁気異常帯。内部ヴァン・アレン帯の最低高度は約1,000km以上であるが、この地帯では高度300から400km程度にまで下がっている。この領域は放射線の防御が弱く衛星の故障が多発している。
今回の研究は地球磁場の反転を否定するものではない。地球磁場が少なくとも1840年から1世紀あたり~5%の割合で減衰している。研究チームの地球磁場モデルは南太平洋異常が磁極逆転に至る変化をたどることなく、回復するシナリオを予測した。この結果は南太平洋異常が逆転に向かうことはありそうにないとしながらも、ベリリウムや塩素などの核種生成に地球磁場が強く影響される複雑系であることも明らかになった。
地球モデルの精度を上げない限り現象し続ける磁場が、磁極逆転に結びつかないとは言い切れない。そのことを暗に認めたかのように論文タイトルには「おそらく」(Probably)として予言されている論文タイトルに、「可能性」(Possibility)という表現はあっても、Probablyという表現は使わない。モデルの精度を考慮してという配慮であるならば、否定し難いという意味なのかもしれない。
一方、1世紀あたり5%というのは無視できない変化量で、エクスカーションがもとに戻らないこともないとはいえない。当分、この議論は続きそうだが地球磁場の観測値に注意するしかない。
Updated: 31.07.2018
記述に一部誤りがありましたので、訂正いたしました。
ご指摘いただきありがとうございました。
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