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2億5000万年前に起きた大量絶滅(ペリア-トリアス大量絶滅)で地球上の生物の90%が絶滅した。地球の環境が回復するのには約500万年を要したとされるが、その過程の多くは未解明である。
アリゾナ大学とNASAの研究チームは大量絶命の原因と生物の復活に時間がかかった理由を調べた。この研究では、これまでの研究では海洋中の酸素欠乏が大量絶滅に関係していると考えられているため、海洋の生態系に注目した。研究チームは新たに炭酸塩中のウラン同位体から酸素欠乏を推定する手法を用いて、海洋中の平均値を推定した結果、大量絶命が突発的な海洋の酸素窮乏と関係する事が明らかにされた(Zhang et al., Science Advances 4, e1602921, 2018)。
従来は岩石中のパイライトの分布を手掛かりにして酸素欠乏度を推定していたが、その場合は局所的な推定値でしかないので、海洋全体の酸素量を推定できなかった。同位体(U238)の挙動は無酸素海域が初期トリアス期に拡大したことを示唆しており、ペルム紀中期からグリースバキスタン中期、ギリシャ紀後期からジエネリアン中期、スミス - スパトス遷移、および早期/中期トリアス紀にかけてピークを迎えた。
初期トリアス期における(U, C, Sr)同位体と海水のPO33-濃度の比較は、海洋産生物の増大との上昇および海洋の(混じり合わず層を形成する)成層が、海洋無酸素の拡大の直接の原因である可能性が高い。U同位体の計測で推定される海洋の酸化還元変動のパターンは、初期トリアス期におけるアンモニアの絶滅のピークと一致する。
この研究の結果は海洋無酸素事象が単発的なものでなく、複数あった事がペルム紀の大量絶滅後の海洋生態系の回復に時間がかかったことを示唆している。下図のピークC1, C2, C3, C4と追い討ちをかけるような酸素窮乏が生じた。