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水資源の不足が食糧危機やエネルギー不足より深刻で脅威が迫っていることは認識度が低いが現実である。水資源に恵まれた日本では無理もないが、世界中で水資源が不足していることは事実だ。国連の調べでは発展途上国では、毎日3万人が不潔な飲料水で死んでいる。電力が潤沢であれば、大規模な海水の淡水化施設を整備すれば良いだろうが、開発途上国では電力も資金も期待できない。そのため水の浄化を簡単にできる方法が模索されている。
テキサス大学オースチン校の研究チームは高分子-ゲルハイブリッド物質(ハイドロゲル)と太陽光を用いた低コストでコンパクトな新しい水浄化装置を開発した。ハイドロゲルは水分子を吸収する高分子の網状構造で、コンタクトレンズに用いられるハイテク材料である。(Zhao et al., Nature Nanotechnology online Apr. 02, 2018)
太陽エネルギーで水蒸気を発生して純水を得る方法は、汚染水や淡水の浄化のための効率的な方法である。しかし水の蒸発に使われる太陽エネルギー利用効率が低く、複雑で高コストの集光システムに頼らざるを得ない点である。
研究チームはポリビニルアルコール(PVA)とポリピロール(PPy)を用いた階層的ナノハイドロゲル(HNG)による太陽熱水蒸気発生システムを開発した。太陽エネルギーはハイドロゲルの高分子ネットワーク(下図)で水分子を高効率に蒸発させることができる。
Credit: Nature Nanotechnology
このシステムでは、1日の照射から94%のエネルギー効率で3.2kg m-2h-1の水を蒸発させ、1平方メートルあたり18-23リットルの水が毎日供給できる。これは太陽光照射下での分子メッシュ内の水の蒸発潜熱の減少する原理に基づいている。
この研究以外にも最近の海水淡水化技術の進展は著しい。これらはナノテクノロジーによるところが大きい。
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