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NASAのハッブル宇宙望遠鏡が軌道上に投入されてから30年が経過した。これまに観測された距離の10倍外側の銀河間距離と基準となる恒星の距離が計測され、ハッブル定数(宇宙定数)と呼ばれる宇宙の膨張の目安となる数値が決められた。この期間に集められた膨大な宇宙画像データによって、宇宙の膨張が確認された。
書き換えられる宇宙定数
ビッグバン後の銀河の軌跡から予想される速度より速い速度で遠ざかっている。ハッブル望遠鏡による過去6年間の画像データで、138億年前(ハッブ時間)のビッグバンから378,000年後の宇宙の膨張速度が明らかになった。これまで欧州宇宙局(ESA)のプランク衛星によるバックグラウンドを除いたビッグバン後のマイクロ波測定によるハッブル定数は、銀河が330光年ごとに毎秒67km速く膨張しているものであった。
今回のハッブル望遠鏡データでは銀河が330光年ごとに毎秒73km速く膨張している、すなわち定数が9%大きい。このことが物議をかもすこととなった。プランク衛星とハッブル望遠鏡の精度は高いためどちらかの数値が謝りではなく、従来の膨張理論に問題があることを示唆しているからである。
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加速する宇宙膨張
ジョンホプキンス大学の研究チームによれば宇宙の73%を占めるダークエネルギー(注1)がそれぞれ異なる加速度で、銀河を外側に押し出している可能性があるという。過去のデータ解析では膨張速度を定数と考えてきたためである可能性がある。他に光速に近い新しい素粒子(ステライルニュートリノを含むダーク放射線)やダークマターとの相互作用による可能性がある。
(注1)通常の物質や放射だけが存在している宇宙では、宇宙の膨張は減速する一方である。膨張を加速させるためには、宇宙全体の運動に対して斥力として働くダークエネルギーが必要となる。ダークエネルギーは宇宙に満ちており73%を占める。ダークマター23%と合わせて宇宙の96%がダークエネルギー、ダークマターである。
研究チームはハッブル望遠鏡とESAのガイア宇宙観測所の観測データを組み合わせて、恒星間の距離測定精度を向上させてマイクロ波測定とハッブル望遠鏡のハッブル定数の不一致の原因を明らかにする計画である。ハッブル望遠鏡はNASAとESA の共同プロジェクトである。宇宙マイクロ波と光学望遠鏡の連携で、宇宙の膨張理論の書き換えが必要になるかもしれない。