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スイスにおける肝臓癌(肝細胞癌)患者数は20年で倍増している。肝腫瘍は突然変異細胞から発達し増殖と拡散が暴走することで起こる。早期発見が難しく発見されたときには末期癌であることが多い。
バーゼル大学の研究チームは抗腫瘍蛋白質LHPPは細胞増殖の暴走を抑える腫瘍抑制機能をもつため、LHPPの喪失と腫瘍増殖が強く相関することを見出した。LHPPを肝細胞癌バイオマーカーとして使用することで、適切な治療が行えると期待されている。(Hindupur et al., Nature online Mar. 21, 2018)。
研究チームはmTOR(注1)シグナル伝達を活性化させて肝細胞癌マウスをつくり、4,000種類以上の蛋白質を分析した結果、燐酸ヒスチジンLHPPが正常細胞には見られず癌細胞飲みに存在することを見出した。
(注1)哺乳類などの動物で細胞内シグナル伝達に関与する蛋白質キナーゼmTORは、エネルギー・酸化還元状態に関する情報に基づいてリボソームの生産と蛋白質合成を促進し細胞成長を促す。
またマウス同様にヒトでも肝細胞癌とLHPPの間の関係が成立し、バイマーカーとして有用であることが立証された。肝細胞癌マウスモデルにおけるLHPPの肝臓細胞での発現は腫瘍の影響を低減し、肝機能の喪失を防止する。
研究チームはヒト肝細胞癌では、LHPPの発現の低い場合、腫瘍が悪性化し生存期間の減少と相関があることを見出した。LHPPはタンパク質ヒスチジンホスファターゼおよび腫瘍の抑制機能を有し、ヒスチジンリン酸化の暴走が発癌性であることを示唆している。
蛋白質からヒスチジン結合リン酸基を除去するホスファターゼであるLHPPは研究が少なく不明な点が多かった。今回の研究はヒスチジンのリン酸化を解析するための新しい研究ツールとなる。
Credit: Nature