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EVのネックは(充電インフラが限定されることもあって)航続距離である。少し前はテスラEVが圧倒的な強みを持っていた航続距離は、大手自動車メーカーの猛烈な追い上げで、量産車(テスラEVでいえばモデル3)で比較すると、航続距離の優劣はほとんどなくなってきた。
次世代のLiイオンバッテリーには電極の安定化による性能と寿命の向上が課題となる。パシフィック・ノースウェスト国立研究所の研究チームは新しい高濃度電解質により、Liイオンバッテリーの充電量が7倍に向上し寿命が向上することを見出した(Chen et al., Advanced Materials online Mar. 25, 2018)。
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充放電に際して反応性の高いLiが電極間を往復するLiイオンバッテリーでは電解質が電極を侵食しないことが鍵となる(上図)。研究チームはリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドをジメチル炭酸塩とビス(2,2,2-トリフルオロエチル)エーテル(1:2モル)の混合溶液に溶かした高濃度電解質を用いることで、充電容量が飛躍的に向上することを見出した。
この電解質ではクーロン効率(99.5%)および優れた電気容量の持続(700サイクル後、> 80%、)を確認した。また新型電解質は低濃度で使用でき、低コスト、低粘度、高い導電性で金属Liバッテリーの実用化が可能になった。Li炭酸塩を添加することで、表面にデンドライトを形成しない電極が実現したことが、バッテリーの高性能化と長寿命化に結びついた。
高濃度電解質は粘性が高く導電性が低下する課題があったが、研究チームは高濃度電解質がクラスタ化として電極を損傷しないようにしてこの問題を解決した。高分子量の中性ポリマーの半希釈溶液からなる粘弾性電解質で電極を安定化することが知られており(Wei et al., Science Advances, 4, eaao6243, 2018)、粘弾性電解質の利用で、Liイオンバッテリーのエネルギー密度と寿命が格段に向上したEVが登場する日が近い。
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