日本近海で発見された1600万トンの希土類資源

17.04.2018

Photo: scmp.com

 

Sm、Ndを代表として希土類金属は日本のお家芸である強力な磁性体の原材料である。元々は加速器の電磁石やMRIなど医療機器では強磁場発生技術とともに発展してきた経緯がある。

 

 

日本近海に眠る希土類金属の発見

希土類金属を含む磁性体でつくる高性能磁石は付加価値の高い輸出製品である。日本は希土類金属消費量で世界2位だが、原材料を中国からの輸入に大きく依存している。希土類に頼らない磁性体の研究も加速している中、早稲田大学の研究チームの研究で最近日本周辺に半永久的に世界的な需要を満たすのに十分な量の希土類が埋蔵されていることがわかった。

 

中国は2016年に約15万トンの希土類金属を掘削したが、これまで政治的理由で供給を制限してきた。そのため日本企業は、希土類を含む製品のリサイクルに取り組むと同時に、希土類を使わない技術の開発や、輸入と引き換えに海外起業に投資するなど、涙ぐましい努力を強いられてきた。

 

また、中国の希土類金属の採掘現場がモンゴル地区にあり、中国の不法採掘が絶えない。さらにEV需要の急増で希土類金属の原料価格が上昇している。希土類金属の価格安定化は国際社会に不可欠であるため、この発見を報じた研究チームは資源の発見を日本の「資源セキュリティ」に貢献すると考えている。ただし海底の希土類金属採掘事業を採算性も考慮して軌道に乗せるには、陸上の10年より時間がかかるため国家的なプロジェクトが不可欠となる。

 

全体の埋蔵量が多くても濃度が低ければ採算性は悪くなる。例えば1,000トンの希土類酸化物を製造するには、100万トン以上の泥を採掘しなければならない。また、他の陸上鉱床には数百万トンの希土類金属が眠っているため、短期的なコストは中国以外の産出国から輸入する方が有利な事は間違いない。鉱床はスラッジつまり泥から分離して精製しなければならないが、海底から大量のスラッジを吸い上げてそのプロセスを継続するのは効率が悪い。

 

海底の埋蔵希土類発見のニュースがメデイアに取り上げられないし、政府も冷ややかである。下手に中国を刺激しないようにとの配慮があるからだ。一方で海外で大きく報道される背景には中国の独占と価格制御に世界市場が不安を感じているからだ。裏を返せば高性能磁石の製造元である日本が中国に頼らず原材料を仕入れることを期待していることでもある。

 

しかし外交カードとして国産の希土類金属の選択肢があるかどうかは資源のない日本にとってはありがたい事実なのだ。採掘実証試験までは駒を進めて海外にアピールすれば足元を見られずに済む。