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暗黒物質は現代物理学と天体物理学において重要な課題であるが、基本的なことすらまだわかっていない。マックスプランク研究所の研究チームはこのほど、暗黒物質と物質との相互作用を理解するために、超高密度星を使用する新しい実験を提案した(Shao et al., Phys. Rev. Lett. 120, 241104, 2018)。
宇宙を構成する通常の物質は、宇宙の物質とエネルギーのごく一部で、暗黒物質が物質の約80%を占めると考えられている。今日まで、暗黒物質は直接観測されていないが、その存在は銀河の回転、銀河団の動き、重力レンズのような様々な天文観測から間接的に推測されている。多くの物理学者は、暗黒物質はこれまでに発見されなかった新粒子で構成されていると考えている。そのため欧州のLHCを始め大型加速器による粒子衝突実験で、新粒子発見で暗黒物質の正体を掴もうとする試みが続いている。
第5の力
重力は、普通の物質と暗黒物質の間の唯一の長距離相互作用かという問題は謎であった。暗黒物質は時空間湾曲を感じるだけなのか、または物質を暗黒物質に引き寄せたり、引き離したりする別の力があるのかは確定していない。暗黒物質に対する自由落下の普遍性に反するこの仮説的な力は、よく知られているように4つの基本的な相互作用(重力、電磁気と弱い相互作用、強い相互作用)に加えて「第5の力」と呼ばれる。
現在、暗黒物質に起因するこのような第5の力を解明する様々な実験が行われている。そのひとつは、地球 - 月軌道の銀河中心(銀河の球状暗黒物質ハローの中心)への加速度異状を観測する月レーザー測距実験(注1)である。
(注1)月表面でレーザーパルスを反射させ、月までの距離をセンチメートルの精度で測定する。
連星パルサーによる第5の力の検証
研究チームは新たに連星パルサーを用いて、通常の物質と暗黒物質の間の5番目の力を完全に新しい方法で観測することを提案した。中性子星は、原子核より何倍も密度が高く、ほぼ完全に中性子である。中性子星内部の巨大な重力場では、暗黒物質との相互作用が大きい。
研究チームは、地球から約3800光年離れた白色矮星を伴った中性子星PSR J1713 + 0747(注2)を発見し、欧州のパルサー・タイミング・アレイと北米のNANOGravパルサー・タイミング・プロジェクトの電波望遠鏡による20年以上に及ぶ定期的な高精度観測で、軌道の偏心に変化がないことが明らかにされた。このことは、中性子星が他の標準物質と同じように、暗黒物質に対して同じ種類の引力を感じていることを意味する。これにより物質と暗黒物質の間に働く長距離力は重力のみで、新しい力(第5の力)が存在しないことがわかった。
(注2)4.6ミリ秒の回転周期を有するミリ秒パルサーであり、既知パルサー集団の中で最も安定した回転周期である。
Credit: Phy. Rev. Lett.