温和だった始生代からの地球気候

03.04.2018

Photo: wattsupwiththat

 

太古からの地球の気候に関しては様々な説があるが、ワシントン大学の研究チームの最新の研究で、これまでの予想に比べて数10億年間に渡って地球の気候ははるかに温和なものであったことが明らかにされた。研究チームのシミュレーションによれば、数10億年前の始生代の平均気温が現在と大差ないもので、海洋のpH数値も現在との差が1以下となる範囲であった(Krissansen et al., PNAS online Mar. 07, 2018)。

 

これまでの研究によれば、40-25億年前の始生代の平均気温はマイナス25Cという寒冷化した環境や85Cという温暖化の極端な環境を予想していた。研究チームが導き出した平均気温は0-50Cの範囲で、始生代は温和な気候であったことがわかった。

 

研究チームはシミュレーションに岩石や海洋の形成と大気温度との関連の最新の知見を取り入れて、40億年前から今日に至る地球の気候変化を精密に再現した。海底の岩石の海流による侵食や海洋から陸に移動して進化した生物による炭素サイクルも取りれて、海水のpH変化も推定した。下図(A)はこれまでの研究による海洋pH、(B)はCO2濃度、(C)は全放出ガスフラックス、(D)は平均表面温度、(E)大陸のシリケート風化フラックス、(F)海底風化フラックス。

 

 

Credit: PNAS

 

研究チームは、陸地が少なかった始生代では、海洋の岩石の侵食が平均気温に強い影響を与えること、地球内部の温度が高かったこと、海底の砕石の移動が激しかったことで気候の極端な寒冷化がなかったと考えている。

 

大陸の大きさや化学的侵食の温度係数など未知の条件に関してはいくつかの異なるケースでシミュレーションを行った結果、始生代の気温がこれまでの理解よりはるかに温和な範囲であったことが明らかになった。このことは46億年の地球史を通じて環境変化の範囲が狭いということは、他の惑星でも居住に適した環境のものを探せば、10億年のスケールで環境が安定であることを示唆している。

 

またこの結果から地球の始状態で生物の発生と進化の道筋を、より正確に理解することにつながるものと期待されている。