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癌、老化に関連した疾患など広範囲な病気は、「テロメラーゼ」と呼ばれる重要な酵素と密接に結びついている。 UCLAの研究チームは、最も活性の高い触媒コアが原子分解能近くで得られた高分解能結晶構造解析に成功し、今まで謎に包まれていたこの酵素の理解が加速すると期待されている(Jiang et al., Cell 173, 1179, 2018)。
テロメラーゼの主な機能は、ヒト染色体の末端にあるテロメアのDNAを維持することでである。テロメラーゼが活性でない場合、細胞が分裂するたびに、テロメアはより短くなり、最終的に細胞が分裂または死滅するほどに短くなる。
異常に活性なテロメラーゼを持つ細胞は、絶えずそれらの保護染色体キャップを再構築することができ、アポトーシスはない。しかし時間が経つとつまり老化すると、DNAエラーが蓄積して細胞を損傷するた。テロメラーゼは、癌細胞を活性化させ、増殖と拡大を可能にしている。
研究チームは、単細胞微生物を用いてテロメラーゼの中心的触媒コアを調べた。
テロメラーゼは、4つの主要な領域およびいくつかのサブ領域を有する特殊な逆転写酵素を含む。RNAを使ってDNAをつくる逆転写酵素は、多くの薬物の標的であるHIV逆転写酵素が典型である。
テロメラーゼの逆転写酵素は特定の6ヌクレオチドRNAのみをコピーし、何度もDNAの長い鎖を作る。テロメラーゼのサブ領域のひとつTRAP(下の図)は細胞が分裂するたびにそれらが短くなるのを防ぐために、DNAの小さな断片を染色体の末端に付加するのに重要な役割を果たしている。
DNAを作る過程でテロメラーゼがとらえられたは初めてで、研究チームは、触媒コア中の成長するDNA鎖にヌクレオチドを付加した直後にテロメラーゼを捕捉した。癌細胞は複製を維持し、これが起こるためには、テロメラーゼは高度に活性でなければならず、それは健康な細胞には存在しない。つまりテロメラーゼ活性化を抑制すれば癌細胞の成長が止まる、という原理である。
Credit: Cell
この酵素の活性をどのように標的化するかは癌治療に極めて重要である。この研究では研究チームの生化学、分子生物学、計算生物学、生物物理学など、いくつかの分野の専門家が協力した。癌研究の最先端はどの分野よりも境界領域(Interdisciplinary)である。異なる分野の研究者が集中して研究を行える環境が、自由意志でつくられる研究機関によって癌治療は大きく変貌するだろう。そのとき現在の主流である標準療法は陳腐化し捨て去らざるを得ない。