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オハイオ州立大学の研究チームは、社会との関係を維持することが脳機能の老化を防ぐ効果を持つことを明らかにした。研究チームによればグループに収容されたマウスはペアよりも良い記憶と健康な脳を持つという。この発見は、社会的つながりが人間と動物の生活にとって重要な役割を持っていることを検証するものである。
今回の研究は、より大きな社会的ネットワークが、老化した脳機能にプラスの影響を与えることを示唆している。人間の認知健康と社会的結びつきとの間に強い相関関係があることは知られている。しかしあるいは脳の健康が老化で低下している人々が人間とのつながりで機能回復できるのかは不明であった。
この研究では、一部のマウスはペアで飼育され、他のマウスは6匹のいわばルームメイトと3か月間一緒に飼育された。マウスは齧歯類のライフサイクルで顕著な自然記憶低下の時期(15ヶ月から18ヶ月)に実験された。
その結果、記憶力の試験では、ペアよりも集団で飼育されたマウスの方が良い成績を収めた。両方のグループのマウスに対して行われた逃走経路探索でペア飼育マウスは、成績が向上しなかったが、グループ飼育マウスは改善がみられた。この実験でグループ飼育マウスが記憶機能にとって重要な脳領域である海馬を使用していることを示している。
ヒト、マウスおよび他の多くの動物において、海馬における脳機能は、認知症がない場合でも、年齢と共に著しく低下する。運動と社会的関係は、この領域の機能維持(記憶を保つこと)に効果がある。またマウスの脳組織を検査した結果、ペア収容マウスにおける炎症の増加を発見した。これは、認知的健康の低下の生物学的証拠である。グループ飼育マウスでは、この炎症の徴候は少なかった。
研究者チームはまた、海馬における新しいニューロンの成長の証拠を探し、グループ間に差異がないことを見出した。研究チームは今後の研究で、社会化と記憶と脳の健康状態の改善との関連について調べる予定である。
高齢者も孤独で暮らすより集団で生活したり、社会とのつながりを保つことで脳機能を維持できることが明確になったことで、高齢化社会設計に生かすことができると期待されている。