Credit: Robert Gutierrez
世界で最も初期の文書として知られる「ギルガメシュの叙事詩」は、メソポタミアのウルクの街を紀元前3千年紀に支配した神の王、ギルガメシュの物語である。
ギルガメッシュの登場人物エンキッドは、獣と一緒に暮らし、ガゼルと一緒に草を食べる野生の男だったが、美しい寺院の祭司に誘惑され、衣服と食べ物を提供され、裸の野獣から、社会生活を営む 「文明人」に変身を遂げる。
野生を文明に変えるすなわち社会形成には多くの人々が協力して働く必要がある。過去数十年にわたり、考古学的には、この協力のおかげで世界中の異なる地域で文明が生じたと考えてきた。アリゾナ州立大学の研究チームは、人々が協力して働くために「祝宴の儀式」が重要な役割を演じたことを見出した(Stanish et al. PNAS online July 2, 2018)。
ペルー遺跡にみる協力の兆し
ペルー遺跡のパラカスはおよそ紀元前800年から200年の間栄えた文明で、この地域で初めて複雑な社会が発達した時代である。
研究チームはパラカスの小さな構造物の多くは、6月の夕日を指していることを発見した。ここでは最初は人々は小さい集団で始まり、祝宴の儀式を重ねて遠く離れた集団が加わって組織が拡大した。
研究チームは、パティオで見つかった39種類の有機物に含まれるストロンチウムを分析した。人間を含むあらゆる有機物における87Sr / 86Srの比率は、対象物がどの地理的領域から来ているかを示すことが知られている。パティオ内の品々は、アンデス南部の中心部の非常に広い(最大600km)範囲のものであることがわかった。
Credit: Charles Stanish, CC BY-ND
祝福の儀式が文明を築く
この研究は、ペルー南岸の最も初期の社会が紀元前400年頃の広範な地域の集落が参加していたことを示している。つまりパラカスの社会では、文明構築早期に広範な同盟関係を構築したのである。祝宴の儀式で形成される協力は、人間の文明にとって重要な一歩であると考えられる。一方、小規模の儀式の場では、ストロンチウム分析によって、対象物および人間の遺体のすべてが周辺からのものであった。
この研究によって大規模文明の構築には広範囲の集落の協力が必要で祝宴の儀式は集落同士を結びつけ協力を引き出すのに重要な役割を演じたことが明らかにされた。成熟した現代文明でそのような儀式を見出すことは難しいが、文明創生期には習慣の異なる民衆に共同体意識を持たせるための儀式が必要だったということである。