Credit: Nature
カリフォルニア大学(サンデイエゴ)の研究チームは、世界の海洋が、1991年から2016年にかけて毎年、1.33±0.2×1022ジュールの熱量を吸収していたことを明らかにした。この数値はIPCC最終評価報告の推定値(4度Cの温暖化)よりも60%以上高く、1991年以来10年ごとに6.5度Cで温暖化していた。これは地球表面の平方メートルあたり0.83±0.11ワットのエネルギー不均衡(入力と出力エネルギーの差)に相当する(Resplandy et al., Nature 563, 105, 2018)。
以前の海洋熱吸収量の推定は、総熱量を海面温度の測定値を補完して得られたもので、測定データ点の不足の誤差が大きい。世界中の海洋の温度と塩分を包括的に測定するアルゴ・ロボットセンサーネットワークのデータも2007年以前のデータが不足し信頼性に問題が残る。研究チームは大気中の酸素とCO2濃度を精密に測定して海洋温暖化を評価した(下図のΔAPOclimateが海洋起源で放出される酸素)。
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地球温暖化説を主張する研究者たちは、過去10年間に、地球平均気温が工業化前の水準を2度C上回る場合、社会が気候変動の広範囲かつ危険な結果に直面すると考えている。この温度上昇限界を上回らないようにするには、人為的な温室効果ガスである二酸化炭素の排出量を前回の25%削減する必要があるというのがIPCCの公式見解である。
しかし地球平均気温の評価を限られた(意図的に選ばれた)地球表面温度から推定することは困難であるため、この研究の様に大気中の酸素、CO2の海洋起源の放出量の推定値を全量観測値から分離して時間変化を評価することの異議は重要である。
海洋温暖化で放出される空気中の酸素およびCO2測定値を使って、海洋がどのくらい熱を蓄積したかを調べた結果、1991年以降の高精度O2データから推定された海洋熱吸収量は大幅に上方修正された。これによって地球温暖化が温室効果ガスの温室効果などの気候変動への地球的対応政策の見直しが迫られる可能性がある。
地球温暖化説の主張は人為的なCO2排出量が増えることによって温室効果で地球表面温度が上昇するというものだが、CO2は海洋の温暖化で放出されるので、大気中のCO2濃度上昇が気温上昇を引き起こすのではなく、海水温が上昇してもCO2が排出されるので、前後関係を結論づけるのは難しいが、海洋の熱エネルギー収支評価は海洋起源のCO2放出量を決定する決め手となる。全体像が描かれる日も近い。歯痒い結果だと思うかもしれないが、信頼できる海洋の熱エネルギーが得られたことで炭素サイクルの理解が加速する事は間違いない。