高効率酸素発生(OER)触媒

01.10.2018

Credit: Nano Lett. 

 

水中の酸素と水素の結合を壊すすなわち水分解は、持続可能な方法で水素を作り出すキーテクノロジーとなるが、経済的な実用技術には至っていない。イリノイ大学の研究者チームは、金属化合物と過塩素酸という物質を混合した電極触媒材料を用いた酸素発生の新型触媒を開発した(Kim et al., Angewandte online Aug. 30, 2018)。

 

電気分解では、電気エネルギーを利用して水分子を酸素と水素に分解する。このカテゴリーの中で最も効率的なものは、金属化合物である酸化イリジウムまたは酸化ルテニウムからなる腐食性酸および電極材料を使用するものである。酸化イリジウムは安定であるが、イリジウムは地球上で最も少ない元素の1つで、実用化には代替材料を探さなければならない。

 

以前の研究では、金属と酸素の2つの要素から作られた電解槽で行われてきた。最近の研究で化合物にイットリウムとルテニウムと酸素の2つの金属元素が含まれていれば、水分解反応の速度が増加することがわかっている。研究チームは、過塩素酸を触媒として使用し、混合物を熱で反応させると、ルテニウム酸イットリウム生成物の物理的性質が変化することを見出した。

 

研究チームが開発した新しい多孔質材料、ルテニウム酸イットリウムのパイロクロア酸化物は、高い速度で水分子を分解することができる。細孔は、ナノメートルサイズのテンプレートとセラミックス製造用の物質で人工的に製造することもできるが、高品質の固体触媒の製造に必要な高温条件下では耐えらない欠点があった。

 

電子顕微鏡で新しい材料の構造を調べた結果、研究チームが以前開発したイットリウムルテネートよりも4倍、市販のイリジウムおよびルテニウム酸化物の3倍の多孔質性であることがわかった。実用化に向けてさらなる材料開発が必要であるが電気分解による水素、酸素発生技術の指針が示されたことで、水素社会への期待が高まっている。

 

Credit: Angewandte