米セントルイス連銀は今年の3月に「連邦準備理事会(FRB)が常設レポ・ファシリティー(SRF)を設置する必要性」と題したレポートを発表した。レポ市場で混乱が将来起きることを懸念するレポートであった。レポートの発表から6カ月後、懸念していた通りにレポ市場で流動性が一時枯渇、FRBは10年ぶりに短期金融市場に資金供給したのである。
レポ市場は不安定な動きをみせており、ニューヨーク連銀は10月10日まで「翌日物レポ取引」で毎日750億ドルに加え300億ドルの3つの14日間レポ(9/24, 9/26, 9/27)の資金供給を実施することを決めた。しかし、流動性の問題は収まらず、期限前の10月4日に11月4日まで延長することを発表した。
常設レポ・ファシリティーの設置
9月に起きたレポ市場での混乱の最中、セントルイス連銀のブラード総裁は23日に常設レポ・ファシリティーを設置する必要性を示した。続いて、ダドリー前NY連銀総裁も同じ日にFRBのバランスシート拡大の再開、短期金利が大幅に上昇することを抑制するための常設レポ・フィシリティーの設置を10月30〜31日のFRB会合で検討すること示唆した。ミネアポリス連銀のコチャラコ前総裁も常設レポ・ファシリティーを設置する可能性を述べ、非公式にFRBが早くても11月中に常設レポ・ファシリティーを設置する可能性を伝えているように思われる。
常設レポ・ファシリティーは、現在ニューヨーク連銀が実施している期限付きのレポオペレーションと違い、レポ市場で資金不足が発生し短期金利に上昇圧力がかかった場合、何時でも流動性供給で市場の安定化をはかる調節手段となる。レポ金利がフェデラルファンド(FF)金利をFRBの誘導目標水準内にとどめることができ、銀行の必要に応じて資金が供給されるのである。
FRBバランスシートの拡大を求める金融機関
米モルガン・スタンリーは短期金融市場の安定化に向けて、常設レポ・ファシリティーの設置に加え、今後6カ月で3,150億ドルのFRBバランスシート拡大を必要としている。つまり、長期的に流動性の問題の解決には「永久的」にバランスシートを拡大し続けなければならないとの見解である。また、バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチは今後1年間に4,000億ドルのバランスシート拡大が必要と見積もっている。
常設レポ・フィシリティーの設置とQEに代わる別名のバランスシート拡大をFRBが実施する可能性が高い。それは、新たな金融危機が起きる予兆でもある。
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