世界全体の政府、家計や金融機関を含む事業会社部門の債務残高が、2019年3月末に対世界GDP比の320%に当たる246.5兆ドル(約2京6129兆円)に達したことを、国際金融協会(IIF)が発表している。世界金融危機前の2007年末に110兆ドルであった世界債務残高は124%も増え、危険的なレベルの拡大が続いている。
先進国や中国をはじめ新興国の債務拡大傾向が止まらない。そのなかでも米国、中国、EU、日本の債務は全体の80.7%、政府部門では80%、家計部門では67%、事業会社部門では75%の世界債務を占めている。
債務拡大は経済成長の重要な要素ではあったが、その効果も沈下している。より多くの債務がなければGDPを押し上げることができなくなっている。結果的には、政府債務、住宅ローン、学生ローン、消費者ローン、自動車ローン、企業債務の巨額なバブルをつくりあげ、持続困難な状況を示唆する兆候が出始めている。
米エコノミストのハーバート・スタイン(ニクソン政権の大統領経済顧問委員長)の名言、後にスタインの法則とも言われるようになった、「永遠に続かないことがあるとすれば、それはいずれ終わる」がある。この名言通り、債務拡大にも近い将来限界がくることは確かである。
お金の起源は債権・債務の信用取引
紀元前2500年のメソポタミア文明において、農民による税の支払いや貸し借りを記録するクレジット台帳が使われていた。この債権・債務の信用取引が後にお金(トークン)が使われる起源となる。お金が使われる前から債務の問題が存在していたのである。
気候や戦争により、農民が税を納めることができなくなった場合、債務者の妻や子供が代わりに奴隷となり、家や農地が没収された。旧約聖書に50年に一度すべての借金が帳消しにされたと書かれているが、メソポタミア文明において、49年ごとに農民の債務が限界に達したとして、商人間の債務を除き農民の全ての借金が帳消しにされた。奴隷は家族のもとに帰され、家や農地が所有者に返された。次の50年目はGreat
Jubileeと言われ、農民は借金がない新しい生活を始めることができたのである。経済混乱を避け、社会の秩序を戻す策であった。それだけ、債務問題が深刻に考えられていたのである。
解決策が見えない今日の世界債務の拡大が限界に達した時、誰もがその経済的、社会的影響を受けることになる。