米短期資金調達市場のレポ市場で9月16日に金利が急騰、レポ金利がフェデラルファンド(FF)金利をFRBの誘導目標水準内に収まるように資金供給を行った。レポ市場での混乱は収まらず、さらに17日から27日の9日連続に資金供給、2008年の金融危機以降で初めての大規模な市場調整を実施した。
レポ市場とは
レポ市場とは、主に金融機関(銀行、証券会社、ヘッジファンド)や企業が米国債などの安全証券を担保に必要な資金を確保する短期資金調達市場である。オーバーナイト(翌日)の資金調達(repurchase agreement)であるため、次の日に借入金と金利を支払うことで、担保証券を買い戻す(reverse repurchase agreement)取引である。通常レポ金利は、銀行間で短期資金を貸し借りする市場金利であるフェデラルファンド(FF)金利がFRBの誘導目標金利である2.0%~2.25%(18日には1.75%~2.00%へと引き下げ)に近い水準で推移するが、クレジット市場の流動性が低下するとレポ金利が急騰する。資金の需要が供給を大幅に上回ったことで、資金調達コストが急騰する状況である。
資金供給を行うのはNY連銀で、レポ取引はJP モルガン・チェイス、シティーグループ、バンク・オブ・アメリカなどの主要米銀行に加え、ドイツ銀行やクレディ・スイスなどの外国系銀行の米法人を含む24のプライマリー・ディーラーに限る。
レポ市場での混乱
16日に銀行が使用可能な資金が一時枯渇したため、レポ金利が最大で10%まで上昇し、政策金利の4倍を超える事態となった。NY連銀は17日に531.5億ドル、18日と19日には750億ドル、20日には756億ドルを供給した。さらに、FRBは短期金利が上昇しやすいと判断、10月10日まで「翌日物レポ取引」で毎日750億ドルに加え300億ドルの3つの14日間レポ(9/24, 9/26, 9/27)の資金供給を実施することを発表した。
しかし、流動性の問題は収まらず、資金の需要が高いため25日には毎日1,000億ドルの資金供給に加え14日間のレポ資金を600億ドルに引き上げた。
レポ市場での混乱の要因として、大規模な米国債入札の決済や法人税の納付、月末にかけての決算対応で一時的にレポ市場における準備資金の枯渇を引き起こしたとされる。だが、こういうことは例年起き、予想できたことで、FRBがパニックになる様なことではないはずである。
別の要因として、FRBのバランスシートの縮小と共に、銀行の超過準備がピーク時の2兆8000億ドルから1兆3800億ドルの低水準になったことがあげられている。または、銀行間の信用リスクにより短期資金の貸し借りが困難となり、資金調達に困った銀行が「最後に頼れる資金供給者」であるNY連銀の資金供給で救済された説。レポ資金の取引情報の詳細が公開されていないため、明らかな要因が特定できないのが現状である。
10月10日以降、FRBは「必要に応じて」レポ金利がFFの誘導目標金利範囲に収まるように資金提供を実施するとしている。つまり、レポ市場におけるFRBの資金供給は短期金利の上昇を抑えるための金融政策となったのである。
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